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行ったり来たりが性に合ってます

登山家・田部井淳子さん

今回のJOINコラムにゲストとして登場していただいたのは、新たに任命されたJOIN大使のひとりであり、世界最高峰のエベレストに女性として世界で初めて登頂したことで知られる、登山家の田部井淳子さんです。

現在も国内外の山に登り続けている田部井さんは、埼玉県川越市の自宅と、福島県猪苗代町に所有するロッジを行き来する現在の生活が「とても楽しい」とおっしゃいます。登山の中継地として、あるいは親しい仲間と盛り上がる隠れ家としても使える、ロッジを利用した二地域居住の楽しみ方、そしていくつになっても楽しめる郊外型レジャーの王道・登山の楽しみ方などを語っていただきました。

地方に登山の中継地点がほしかった

私は、福島県田村郡三春町に生まれました。日本三大桜のひとつである滝桜で有名な、景色のきれいな町です。 現在の住まいは埼玉県川越市ですが、JOINのテーマに沿った形でいえば、福島県猪苗代町沼尻にあるスキー場のふもとに、ログハウス風のロッジを持っています。月に数回、年に通算で1?2カ月はそのロッジで過ごしますので、二地域居住という形になるのでしょうか。

自宅のほかに地方拠点がほしいという思いは、かなり前から持っていました。一年中、方々に出かけては山に登るという生活をしていますから、山の近くに拠点を確保しておきたかったんです。
このロッジを購入したのは25年ほど前になります。その後、16年前に人がたくさん集まれるように改築しました。会津磐梯山をのぞむスキー場の目の前にあり、豊かな自然に囲まれた、四季を体で感じられる素晴らしいロケーションです。

行ったり来たりが性に合ってます

地方に拠点を探す際に、川越の自宅を移したいという気持ちはありませんでしたね。そもそも、私は田舎の雄大な景色は大好きですが、ずっとそこにいるよりも、都会と田舎を行ったり来たりする生活のほうが性に合ってるのだと思います。
いまも、デスクワークが3日ほども続くと、おしりのあたりがムズムズし始めて「ああ、山に行きたい」という気持ちになります。けれどその後に山の自然の中でしばらく過ごしていると、逆に「ちょっと街に出たい」と考えはじめてしまうんです。
だけど私は、こうした繰り返しだからこそ、田舎の良さと都会の良さをうんと感じられるのだと思っているんです。田舎にどっぷり浸り続けていると、田舎が持っている良さの部分を「当たり前」に感じてしまう。それじゃあ、もったいないという感じがするんですよ。 都市部で仕事をしたり普通の生活をしている中で、「そろそろ花見の季節だ」「きのこや山菜の季節だ」と考えてウキウキする。そして地方に行って、実際に田園風景にうっとりしたり、大自然の迫力に圧倒される……これが楽しいんですよね。

子供たちにふるさとの味を伝えられた

福島のロッジを購入する際には、実は紆余曲折がありました。その前に長野県と新潟県で、それぞれ土地を買っているんですが、どちらも建物を建てる前に売却することになり、最終的に故郷である福島県三春町からそう遠くない猪苗代町のロッジを買うことになったんです。
いまでは、福島に買ってよかったなと思っています。私は当時、冬になると海外の山を登りに行っていたため、よく家をあけていました。そのせいで、特に秋や冬、お正月などの料理に関しては子供たちにふるさとの味を伝えられなかったんです。けれど福島のロッジを買ってからは、冬に日本の福島にいる時間が増えた。おかげで私が食べて育った福島の冬の味を伝えられたかなと思っていますから。
もちろん、冬以外にもロッジは一年中使っていますよ。プライベートでスキーや花見をしに行ったり、紅葉を楽しんだり、同級生で集まって芋煮会をしたり、旅行会社が主催するツアーの案内人として訪れたり……とにかくフル活用していますね。

50歳からのスキー、60歳からの登山

実は私、冬山にはたくさん登ってきましたが、54歳の時までスキーができなかったんです。息子なんかは3歳のころからスキーになじんでスイスイ滑っていましたが、私はヒマラヤやアルプスに登ってはいたものの、ぜんぜん滑れなかったんです。
それどころか「同じ場所を行ったり来たりして何が楽しいんだか」と思ってたくらいでした。
でも、たとえばマッキンリーの山に入るには、荷物の運搬をする都合上、どうしてもスキーが必要だったんです。それで54歳にして、スキーを習い始めたんですが……山スキーを始めてみたらすごく楽しかったんですよ。他の人には見られないような大自然の雪景色を全身で味わえますからね。
これと同じように、私は高齢になった方にも登山やスキーなどの新たなアウトドアの趣味をおすすめしたいと思っています。
ある程度の年齢以上の方は、登山などに興味はあっても体力的に無理なんじゃないかと尻込みされる方が多いようです。けれど、そんな心配はいりません。
登る山は、自分の体力に応じたところを選ぶことができるんです。普段の生活ができていて、歩いて買い物に行ける方なら、いつからでも、どなたでも始められる趣味、それが登山なんです。

登山も移住・交流も「やってみる」のが大切

人生の途上から、新たな趣味を始めることも、新たな土地での生活を模索することも、最初に抵抗がある点では同じだと思います。でも、なにごとも最初は「思い切って飛び込んでみること」が大切なのではないでしょうか。
たとえば冬山に登ったことがない人は、冬山という言葉を聞いただけで「危険だ」「遭難する」と敬遠してしまいます。でも、冬に雪が積もったからこそ行けるようになる山もあるんです。たとえばブナの林。夏の間はヤブが深くて歩けないような林も、雪が積もったらスノーシューズで歩けるようになるんんです。
そうして入ってみると、誰もが「冬のブナ林ってこんなに綺麗なんだ」と感動する。こうした感動的な景色を見ないで死んでいく人は、本当に気の毒だなあと思ったりもしちゃうんです。
安全が確保されていて素晴らしい風景をのぞめるところは、調べてみればたくさんあります。でも、「行くぞ」と行動をおこしてみなければ決して見つからない。皆さんも、まずは飛び込んでみることから始めてみてください。

田部井淳子公式HP
http://www.junko-tabei.jp/

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