ホーム移住こだわりスタイルペーパークラフト作家・大熊光男さん

移住こだわりスタイル

“埋もれない”地方から攻めるメリット

ペーパークラフト作家・大熊光男さん

今回、JOINコラムのゲストとして登場していただくのは、ペーパークラフト作家の大熊光男さん。在京のクライアント向けに雑誌の表紙や広告を飾る作品を製作することが多いという大熊さんは、約15年前に茨城県のつくば市へ移住を果たし、現在もつくばで活動を続けています。

テレビ東京「テレビチャンピオン」のペーパークラフト王選手権で3連覇を達成した、日本を代表するペーパークラフト・イラストレーターが、東京ではなくつくばに暮らし続ける理由、そして活動拠点が地方にあることのメリットなどを語っていただきました。

「毎日東京にいる必要はないな」

つくばへと引っ越してきたのは、約15年前。私が30歳の頃でした。もともとは都心の近くで就職していたのですが、ペーパークラフトで身を立てるという夢を捨てきれずに退社し、独立して数年……。どうにか食べていけるようになったため、早いうちに家を買いたいと考えてのことでした。

当時も今も、仕事相手は東京の会社がメインであることに変わりはありません。けれど、東京に住みたいという気持ちはありませんでした。作品を作るのは自宅兼工房ですし、作品を届けに出向くのはせいぜい週に1回程度。だったら「毎日東京にいる必要はないな」「もっと豊かな自然のあるところに住みたい」と考えたからです。そこで“都心へのアクセスが容易な田舎”というコンセプトで、土地や建物を探し始めました。軽井沢や千葉、三浦半島など、いろいろなところを見て回りました。仙台周辺に興味を持ったこともありました。

結局はつくばに落ち着いたのですが、そのつくばも数年前に「つくばエクスプレス」が開通して、すっかり東京からの通勤圏内になりましたね。近所には、都心部へ毎日通ってらっしゃる方も多く住んでいます。

中心地がない業種だからこそ

ペーパークラフト・イラストレーションという仕事は、世間では特殊な部類に入ります。とはいえ、仕事で使う材料や作業環境として、特殊なものを必要とするわけではありません。使うのは画用紙などの紙とボンドとハサミだけ。作業場所も選びません。ですから、地方で仕事場兼自宅を探す際に、特に条件を設けずに済んだのはありがたかったですね。

もし、仕事が陶芸などの場合には、そうはいかなかったはずです。たとえば陶芸の世界では、日本各地に、窯元が集まる土の産地が“本場”あるいは“中心地”として存在します。つくばの近くにある、益子や笠間などもその一つです。こうした“業界にとっての中心地”がある場合、お客さんもそこを目当てに集まってくる。となると、他の場所で仕事場を構えることがデメリットになりかねません。土地選びの選択肢が非常に狭まってしまうんです。

私の仕事がペーパークラフトでよかったと思うのは、こうしたことを考えずに済んだと実感する時です。気持ちよく仕事ができる場所を自由に探そうという気持ちに、大きな制限がかけられませんでしたから。

“埋もれない”地方から攻めるメリット

つくばへの引っ越しを決めた当時には、イラストレーター仲間から「そんなところに行ったら仕事なくなっちゃうよ」と心配されたものです。でも私は「自分の作品が認められるようになれば、仕事はなくならない」と思っていましたし、今はこれを実感してもいます。

むしろ逆に、田舎にいた方が、自分の仕事が“埋もれない”という感覚さえあります。たとえば東京にいたままだと、自分の仕事が珍しいものであっても、周りにもっと珍しい人がたくさんいます。そうなると、結果としてピックアップされずに終わってしまう可能性が高いのです。ところが地方では、その個性が埋もれてしまうことはありません。私は、つくばの百貨店で個展を何度も開催しています。

そして、ここでの個展が好評だったため、他の地方でも何度となく個展をやらせてもらえるようになりました。これは、つくばに住んでいたからこその展開だと思っています。たとえば都心部に住み続けていたとして、いきなり池袋の百貨店で個展ができたかと考えると、きっと厳しかったでしょうから。つまり、他人からは「都落ち」のように見えるかもしれないつくばへの移住は、私にとって大成功だったということです。今ではむしろ「地方から攻めたほうが有利なのでは」と考えているくらいです。

地方にいることで発展する世界

緑豊かな土地に住み始めたことで、クリエイターとして新たな作品群を展開することもできました。私の作品は、キャラクターに加えて背景も紙で作ったものが基本となっていました。つまり、すべてを紙や模型的なジオラマの中で完結させる作品です。しかし、緑が豊富なつくばに来てからは、キャラクターを自然の風景の中に置いて撮影するという作品をいくつも作っています。田園風景や雑木林といった実際の景色をバックに、ペーパークラフトのキャラクターを手前に配置して撮影するという写真作品です。都心部に住み続けていた時は、こうした作品の背景を探すのはとても大変でした。

でも、つくばに来てからは勝手が違います。つくばも中心部は栄えていますが、私の工房はそこから離れたところにあります。大好きなバイクに乗ってちょっと走るだけで、いくらでも撮影ポイントが見つかるのです。

教育熱心な我が街

つくばならではの活動といえば、こちらに来てから始めた「ペーパークラフト教室」も挙げられます。つくばには学園都市という名前がある通り、とても教育熱心な土地です。習い事に関して、関心の高い方が多く住んでいらっしゃいます。そこで、子供を中心にペーパークラフトの作り方や楽しみ方を教え始めてみたんです。今は、仕事の都合で教室は中断していますが、その教室を楽しく運営できたのは、教育熱心なつくばならではのことだと思っています。

もし、子供を連れての移住を考えている人がいたら、私はつくばを強く推します。「つくばは住みやすく、勉強熱心ないい土地ですよ」という感じでしょうか。私がつくばに住んでから15年が経ちましたが、これまでに「やっぱり都心に住むべきだった」と思ったことはありません。だから、この先もし大ブレイクを果たして「どこにでも家を買える」という状況になったとしても、東京は選ばないと思いますね(笑)。

大熊光男HP 「ペーパードリームス

→メールマガジン購読お申し込みはコチラ

今月のプレゼント

ページトップへ