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テレビ東京・大島信彦さん

ある田舎街を訪れた芸能人が、周囲の人とふれあいながら、一夜の宿を求めてさまよい歩く……。テレビ東京の『田舎に泊まろう!』は、名所旧跡も温泉も名物料理も映らない旅番組ながら、田舎の景色とそこに住む人々の姿を映し、大人気を博してきました。
今回のJOINコラムは、『田舎に泊まろう!』のチーフ・プロデューサーである大島信彦氏をお迎えし、“地方とのふれあい”をテーマに番組を制作してきた経験から見えてきたものを語っていただきました。
『田舎に泊まろう!』は、2003年に放映が開始された番組です。タレントさんと田舎のご家族との一夜のふれあいを描いた旅番組としてご好評をいただき、今では放映回数も200回を超えました。
けれどこの番組は、企画段階からこのような狙いで作り始めたわけではありませんでした。 作りたかったのは、既存のものとは全く違う旅番組でした。そこで、何も仕込みがなく、名所旧跡や名物料理、温泉などが出てこない番組はどうかという話になりました。そのうえ出演するタレントさんには、行き当たりばったりで民家に「泊めてください!」と交渉してもらう……。
最初は、番組として人気が出るかどうかという以前に、ロケがうまく終わるかどうもわかりませんでした。何しろ一切の仕込みを放棄するわけですから、どのように話が展開するかもわからないんです。

そこで、我々はまず一本のフィルムを作ってみました。放送が前提ではないパイロット版を作るために、試しに一度ロケを行ってみたのです。
2002年のことでした。 この旅が意外に“深い”ものになりました。 実は制作スタッフとしては、まず自然の「絶景」を撮ったら、あとはハプニングが起きるのを待ち、そのドタバタをとらえて……というような展開を想像していたんです。
ところが実際は、いろんな方と交流をしながら話が進み、山の上に住む老夫婦の家に泊めてもらい、翌朝の別れの時にはおじいさんとおばあさんが泣いてしまうという展開になりました。 その時の私の本音は「まさか、こんな濃密な人間ドラマが撮れるなんて」というものでしたが、しかしこれで番組の骨子が定まりました。

これまでに、200回以上の放送があり、400人以上の旅人を映してきました。その中で、民家に泊めてもらえずに野宿するはめになったのは、たった一度だけです。 その唯一の例外を除けば、すべての回で民泊していますが、実は我々もここまでの成功率は想像していませんでした。もっと「野宿になった!」というハプニングが起きると思っていたんです(笑)。
よく「田舎の人は良い人だ」と言いますし、我々もそうした部分を多少あてにしてはいましたが、見ず知らずの人間をここまで泊めてくれるとは考えていませんでした。 最近では村の人に「もしかして『田舎に泊まろう!』じゃない?」とバレてしまってから泊めてもらうこともありますが、それも含めて本当にありがたい話です。
ただ、タレントさんは本当に毎回ヒヤヒヤしていらっしゃいますね。どなたも本当に仕掛けがないことをまず驚いて、時には怒ったりして(笑)、それから「じゃあ真剣に泊めてくれるお宅を探さないと」って。

私は毎回ロケに同行するわけではありませんが、それでも何十回と同行してきました。その中で、いくつか見えてきたものがあります。 高齢者の一人暮らし家庭は多いけれど、大切にケアされている――というのがそのひとつです。
孤独死などという事態にならないよう、高齢者の一人暮らしのお宅にも、頻繁に人の出入りがあるんです。社会問題となっているような老人の孤独死とは、都会ならではの問題なのかなと思いましたね。 そうした人の出入りにも関係のあることですが、次に驚いたのは家に鍵をかけないことでしょう。鍵がかかってないのを皆が知っているから、家を訪ねても呼び鈴やノックもなしに、いきなりドアを開けて「こんにちは」というお宅が多いんです。人間関係が濃密なんですね。
ただしこうしたシーンは、防犯上の理由もあってテレビでは放映しないようにしています。不特定多数の視聴者に向かって「このお宅は施錠してません」なんて伝えるわけにもいきませんから。

近年は、特に「田舎暮らし」や「農村体験」などへの関心が高まっています。『田舎に泊まろう!』の人気も、その影響は受けていると思います。そうした関心の高まりを意識した番組の企画も、増える傾向にあります。
また最近では、多くの田舎が市町村の統廃合によって「△△市」という大きな自治体に組み込まれてしまいました。番組では、そのままだとどのような田舎かというイメージがわきにくいため「旧○○村」と表現しています。住所が「△△市」になったところで、村の景色や生活が一変するわけではありませんから。
ですから「そろそろ田舎を探すのが大変になってきたのでは?」と聞かれても、実はそんなことはないんです。なにしろ我々は、名所旧跡や温泉や名物料理を必要としない番組ですから、要するに「どこへ行っても大丈夫」なんです。
最近では「田舎は無尽蔵にある」というイメージにすら、なりつつあります。 こうした田舎が、田舎の景色のまま、ずっと残っていてくれたら……。これは、田舎をテーマに番組を作っているという仕事を抜きにしても、切に思います。 というのも、実は私にも田舎暮らし願望があるんです。私は絶景の棚田の景色が大好きで、いつか美しい棚田で米を作ってみたいと思っているんです。最近では棚田の一部を貸し出してくれる市町村もありますしね。家族が納得してくれたら、いつかは(笑)。

テレビ東京『田舎に泊まろう!』公式ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/inaka/index.html
テレビ東京系列:毎週日曜日19時〜20時に放送
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