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ネオン病より草花病

自在屋・川井達弘さん

地方への移住、地方との交流という考えがまだまだ世間で語られることの少なかった1993年に、神奈川から故郷の秋田へUターンし、実家で「田舎暮らし体験塾・自在屋」を開講した川井達弘さん。

今回のJOINコラムは、のべ3000人もの人々を迎え入れてきた川井達弘さんに、田舎暮らし体験塾の運営を通して得たさまざまな実感を語っていただきました。

早期退職から自在屋の開設まで

神奈川県でコンピュータ会社に勤めていた私が、早期退職して秋田に帰ろうと決めたのは1993年のことでした。とはいえ、それまでとはまったく異なる生活を、いきなり始めたわけではありません。また、最初から「田舎暮らし体験塾」を始めようと思っていたわけではありませんでした。

神奈川に住みながらブルドーザーの免許を取得したり、山形県で開催された農学校に参加したり、また秋田に越してからも近隣の人たちと共同でイベントを開催したりしながら、だんだんと「田舎暮らし体験塾」というアイデアが固まってきたのです。

けれど、当時は周囲から理解を得るのが難しかったのをよく覚えています。現在のように「田舎で暮らそう」「田舎に帰ろう」という潮流がなかった時代ですから、会社の元同僚などからは「そんなのムリだ」とよく言われました。

考えもしなかった「お金の心配」

思えば私は「田舎に帰って暮らそう」と考えた時に、お金の心配はほとんどしませんでした。これは生来ののんきな性格もあったのでしょうが、田舎での暮らしにお金はかからないというのを自身の体験で知っていたからかもしれません。

そして結果的に、「やはり田舎での暮らしにお金はいらないなあ」ということを実感できています。

たとえば春には山菜などを採っていれば野菜を買うことはまずありませんし、カマドと囲炉裏を使えばガス代もかかりません。買わざるを得ない肉や魚の単価も安いですし、道路が空いているから車の燃費もよくなります。生活にかかるお金は、都会時代の1/3程度で済んでいるのではないでしょうか。

ネオン病より草花病

そうして考えたのは「田舎は安い」というよりも「都会ではムダが多かったなあ」ということでした。 たとえば、歩いていける距離なのにタクシーに乗ったり、用もないのに喫茶店に入ったり、そして料金が高いだけのお店で酒を飲んだり……。

でも、いまや気分を安らげるには喫茶店に入る必要はなく、野に咲く花を見ていたほうが癒されますし、酒を飲むなら自宅の囲炉裏で仲間と飲むのが、一番うまいと思えます。よく「都会のネオンが恋しくなりませんか?」なんて言われますが、ぜんぜん恋しくないんです。

これを私は「ネオン病より草花病」という言葉で表現しています。年齢のせいなのかもしれませんが、私は第二の人生を送る場として、とてもいい環境を得られたと思っています。

自在屋を訪れる人々

自在屋を訪れる人には、こうした「50年前の田舎暮らし」を体験してもらっています。 山で山菜をとり、田んぼや畑で作業をし、川で遊んだり魚をとって、囲炉裏を囲んで食事をする。 そうした人たちは、「田舎暮らしとはどういうものですか?」というような質問を投げかけてきたりはしません。その答えはすべて自分で見つけるものですし、ここで体験できるからです。

リピーターが多いのも特徴です。何度もここでの暮らし体験を繰り返してから、実践に踏み切る……というパターンですね。 また「田舎に家を買って、すぐに移住するんだけど、その前にチェーンソーの使い方や農作業を学びたい」という方も少なくありません。

交流は移住より大なり

現在は、さまざまなマスコミや自治体が、地方への「移住」を呼びかけています。ですが私はいきなり移住というのはリスクが大きいのではないかと考えています。 それよりは、まず視野と人脈を広げられる「交流」から入った方が、リスクも小さく、いろいろな波及効果が生まれるものです。移住は、それからの話でしょう。 「なぜ田舎に住む人たちは90歳や100歳まで元気でいられるのか」ということに対する答えも、きっと現地でその人たちと交流を持つことで、わかってもらえるのではないかと思います。

ミニふるさと村を作りたい

これからは一軒の家として50年前の暮らしをするだけではなく、そういう家が集まって村作りをする「ミニふるさと村」を作りたいと考えています。農作業を して家畜を飼って、ゴミもCO2も出さない集落です。採った野菜や産みたて玉子を、近くの「道の駅」に売りに行ったりするのもいいかもしれませんね。

そして、さらに将来的には、私たちが年齢を重ねて、山や畑に人を連れていけなくなったら、家を人に貸してはどうかと考えています。
私たち夫婦は2階に住みながら、1階を夏休みの1カ月や半年といった期限で貸し出して、好きに使ってもらうんです。「数日の田舎暮らし体験」ではなく「短期の移住体験」のできるスポットにするということですね。

たとえば文章や絵を書く人に冬場に貸すのもいいなあと思いますよ。雪が深々と降り積もる静かな夜に、囲炉裏に当たりながら創作活動……ものすごくいいものが出来るのではないでしょうか。

自在屋ホームページ http://homepage3.nifty.com/jizaiya/

JOIN内「自在屋」ブログ http://www.iju-join.jp/prefectures/akita/blog/500114/

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