
湯沢市雄勝観光協会・高橋隆さん

回のゲストは、東京から生まれ故郷の秋田県へとUターンを果たし、現在は本業のかたわら湯沢市雄勝観光協会理事を務めておられる、高橋隆さんです。30代前半でのUターンにより、得たものは何か、そして失ったものは何か……。自然に囲まれたふるさとでの暮らしぶりや、観光協会の一員として愛する地元への気持ちなどをうかがいました。読めばきっと、ノスタルジックなのに新鮮な、秋田での生活がうらやましくなるはずです。

私はいま、故郷である秋田県湯沢市に住んでいますが、都市部から戻ってきたUターン組のひとりです。
高校卒業後は地元で就職したり親の事業の手伝いをしていましたが、二十歳すぎの時に上京を果たしました。「まだ若いんだから好きな事をしたい」と、シンガーソングライターになる夢を追いかけたんです。けれど、音楽で食べていくのはやはり難しく、最終的には大手情報出版企業で働くようになっていました。
最初は埼玉の都市部、次に東京の都心で勤務して、その間に結婚し、子供も生まれていました。でも今思えば、わりと早い段階から「いずれは故郷に帰りたい」と心に決めていましたね。
Uターンを実行したのは10年ほど前のことです。妻と子には、「いつか秋田に戻る」と言ってあったため、さほど反対はされませんでした。
実行のタイミングとしては、子供の学校が変わる時期を選びました。上の子が小学校を卒業すると同時に、秋田へ越したわけです。それがよかったのか、もともと子供の持つ順応力なのか、子供たちはすぐに秋田の暮らしになじみ、何の問題もなく過ごしていました。けれど東京生まれでIターンすることになった妻は、初めのうちは田舎の生活に戸惑っていましたね。

ふるさとに帰りたい、Uターンしたいという気持ちはあったものの、実践前に不安だったのは、やはり仕事のことです。できるなら東京にいるうちに田舎でできる仕事のメドをつけて帰りたいと思っていました。
そこで私が目指したのは林業でした。もともとアウトドア趣味を持ち、自然が好きだった私にとって、あこがれの職業のひとつが林業士だったのです。幸い、当時の仕事仲間のつてで地元の森林組合を紹介してもらえましたから、この夢は叶う寸前までいったのですが……。結局、うちの田舎には私の受け入れ先はありましたせんでした。兼業農家を営んでいた私の実家が保有する山を含め、田舎の山の多くは、誰も手を付けてないせいで荒れていましたから、ぜひ林業士になりたかったのですが……非常に残念でしたね。
最初から場所を那須と決めていたわけではないんです。けれど那須には「あこがれの土地」というイメージがあったんですよ。
こうして、職を持たないまま帰郷した私は、紆余曲折を経て現在はオンデマンド印刷会社のプリントワールドを展開中の雄物川印刷に勤めています。
経済面の話をしてみると、Uターン前から収入減は覚悟していましたが、実際はその予想よりも厳しかったというのが本音です(笑)。ですが兼業農家の実家暮らしは、いわば半自給自足の状態です。入る金は減ったものの、出て行くお金も少なくなりましたから、都会暮らしで身についた感覚では少ないと思える額でも、生活はできています。実は5年ほど前に実家を二世帯住宅に建て替えましたので、まだまだ頑張って働かないといけませんね。

このコラムでは私の肩書きが湯沢市雄勝観光協会理事となっていますが、これは本業ではありません。知人である観光協会の会長さんから、「若い人間として企画立案などに協力してほしい」とお声がけをいただいたので、協力させてもらっているんです。
基本的にはボランティアのつもりですが、実は、少しくらいは本業の仕事につながるかもという下心もありました。でも実際には仕事へのフィードバックなどほとんどなかったので(笑)、今は「地元への恩返し」のつもりでさまざまなイベントに関わっています。
実家の建て替えまでした以上、私は今後もこの秋田の田舎に住み続けるつもりです。そう考えた場合、地元には少しでも元気になってほしいですからね。
その意味で、私の現在の目標は、観光協会でのいろんな事業・イベントを盛り上げて、地元に観光客を呼ぶことです。それが雇用の発生にもつながり、地域を活性化させる道だと思っています。

引っ越してきてすぐに、子供は田舎の生活になじんでくれましたが、親として長く住んでみると、その優れた教育環境を実感させられました。
家の裏には山があり、眼前にはイワナやヤマメが釣れる川が流れている。夏にはホタルも飛んでくる。そういう自然の中で暮らす子供を見ていると、東京で暮らしていた時とは明らかに違う、ゆったりとした時間の流れを感じます。私も子供の頃は川で釣りをしたり魚の手づかみに挑戦したりしたものですが、そういう環境がまだ残っているのは素晴らしいことです。
また、秋田は学力優秀な県としても知られています。
あくまで私の推測ですが、これには学校の生徒数の“絶妙な少なさ”が関連しているのかもしれません。生徒数が多すぎず、かといって1クラスに複数学年を詰め込めるほど少なくもないため、先生の目が全生徒に行き届きやすいのでは……と思っています。
そういえば、最初はなじみにくそうにしていた妻ですが、いまや私よりよっぽど地域にとけ込んでいます。彼女は現在、地元のコミュニティFM局(FMゆーとぴあ)のパーソナリティとして、高橋薫という名前で週に何本も番組を担当して、ヘンテコな秋田弁を電波に乗せています。もともとは私と同じ情報出版企業にいて職場結婚した、ラジオとは無縁の人間だったのですが、不思議な展開もあるものです。

最後に、私の住んでいる旧雄勝町(湯沢市)を改めてご紹介しましょう。
小野小町の生誕の地とされている雄勝には、それを記念した小町堂があり、ここは6月に開催されるイベント「小町まつり」の舞台にもなります。市から選ばれた七人の小町娘が舞いや和歌を披露しながら小町堂を巡るお祭りで、期間中は町に大勢の人が訪れます。私はこの小町まつりの本祭りディレクターを、かれこれ3年ほど務めています。それぞれに仕事を持つ小町娘さんと行う、ほぼ毎日の練習や、その他の準備などで忙しくはなりますが、祭りをうまく運営できた時の喜びは格別です。
他にも、8月には雄勝大花火大会や、仮装をして楽しむ盆踊り大会、寒い2月にはカラー石像コンテストが楽しい雪祭りなど、季節ごとに楽しいイベントも催されています。
自然に興味のある方には、映画『釣りキチ三平』のロケ地にもなった役内川がおすすめです。雄物川の支流として雄勝を流れるこの川は、釣り人にはアユがよくあがる川として知られています。
これからの行楽シーズンには、ぜひ雄勝を訪れてみてください。楽しい思い出が残ることは、私が保証します!
秋田県湯沢市公式HP「小町まつり」情報ページ http://aios.city-yuzawa.jp/kanko/event02.htm
プリントワールド公式HP http://print-w.jp/
FMゆーとぴあ公式HP http://www.yutopia.or.jp/~fm763/
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