全国サミットレポート

2015年3月8日(日)東京・六本木にて、地域おこし協力隊全国サミットが開催されました。その模様をお伝えします。

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2015年3月8日、全国から自治体の職員や現役の地域おこし協力隊員、一般の方など、総勢約700名が集い「地域おこし協力隊全国サミット」が行われた。このサミットは、一般の方も含めた全国規模のイベントとしては初開催。会場に熱気や期待が立ちこめるなか、ついにスタートした。その様子をお届けする。

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Stage1 挨拶・PRタイム・特別講演 日本を救うのは、地域おこし協力隊

はじめに挨拶したのは、高市早苗総務大臣。
「地域おこし協力隊は、創設された平成21年度は全国で89名でしたが、平成25年度に978名に増えました。そして平成26年度には1,500名を超えそうな勢いです」と、隊員数の増加を報告した。さらに「任期を終えた隊員が起業しやすくするための財政措置なども実施していきます。都会から地方へ人が流れ、地域が元気になっていく。地域が元気になれば、日本が変わると思いませんか。そのきっかけをつくるのが地域おこし協力隊のみなさんです」と、隊員や自治体に向けた力強い支援を約束し、地域おこし協力隊の今後の活躍に期待を寄せた。

全国の地域おこし協力隊員によるPRタイムでは、全国から集まった約300人の隊員が壇上にあがった。そこで発せられたのは、地域のPRや自らの活動紹介など、練習を重ねたのだろうと思われる熱いメッセージばかり。なかには、のぼり旗や着ぐるみなどを使ってユーモアあふれる演出をしたり、肩車をして結束力をアピールしたりする自治体も。自治体ごとのカラーや創意工夫が見受けられ、会場が湧きあがった。

次に登壇したのは、日本を代表するクリエイティブディレクターの一人、佐藤可士和さんだ。「ブランディングとは、『本質的価値×戦略的イメージコントロール』です。地域の一番いいところ(本質的価値)を把握するためには、外部人材としてのコミュニケーションスキルが重要」と、クリエイティビティを地域に生かすノウハウなどのお話があった。真剣な表情で聞き入る参加者たち。地域資源のブランディングに興味をもつ人の多さがうかがえた。最後に佐藤さんは、必要なコミュニケーションスキルとして「①人の話をちゃんと聞く問診力、②話の本意を読み取る理解力、③自分の考えを正確にまとめる整理力、④相手に分かりやすく伝える表現力」を挙げて「これらの“4つの力”を駆使して、それぞれの活動に励んでください」とエールをおくった。

Stage2 地域おこし協力隊トークセッション 現役隊員の語る夢や、隊員OBによるアドバイス

司会として『農山村は消滅しない』や『地域再生のフロンティア』などの著書をもつ明治大学農学部教授の小田切徳美さん、俳優の峰竜太さんをお迎えし、5名の地域おこし隊協力隊員によるトークセッションが行われた。

まずは、5名の自己紹介からスタート。
2013年5月から長崎県壱岐市で活動中の、合口(あいぐち)香菜さん。岩手県陸前高田市出身。東日本大震災を機に東京から長崎県へ移住した。「父が漁師だったこともあり、海女さんになりたくて“海女活”をしていたところ、隊員になり、2013年から新人海女の後継者として活動を始めました。地元のベテラン海女から指導を受けて、5〜9月はアワビ、サザエなどの収獲をしています」。

2013年10月から茨城県常陸太田市で活動中のミヤタユキさん。東京から着任した現代美術家だ。「常陸太田にはアーティスト・イン・レジデンス(アーティストを招聘し、滞在して作品制作を行う)があり、私はディレクター兼アーティストとして活動中です。古くなったこいのぼりをリメイクしたブランドを立ち上げました。アートを通じて地域のあり方を考えたいと思っています」。

2013年4月から長野県・天龍村で活動中の内藤有香さん。静岡県浜松市出身。着任前は海外の秘境ツアーの添乗員だったという。「日本の田舎は最高だな、定住したい!と思い、その手段として応募しました。実は天龍村を選んだのは、応募資格の運転免許がAT車でも可能だったから(笑)。コンビニも信号もない田舎生活を体験してもらうため、学生を呼んで交流する活動をしています」。

山形県・朝日町で2010年10月〜2013年9月まで活動していた、隊員OBの佐藤恒平さん。着ぐるみを活用して地域の情報を発信する研究をしていたところ、町から声をかけられ、隊員に。「ゆるキャラの着ぐるみを使い、私自身が“中の人”となって町のPRをしていました。今は朝日町を含めた日本の各地で、地域の方自身にアイデアを出してもらって、その振興をサポートする会社を運営しています」。

香川県・小豆島町で2012年6月〜2014年3月まで活動していた、隊員OBの眞鍋邦大さん。香川県高松市出身。東京で外資系金融会社に勤めていたが、小豆島へ。「現代版の『二十四の瞳』をやろうとティーチングツアーを行ったり、老若男女が集まる空間を目指して『ポンカフェ』をつくったりしました。地域応援をミッションとする株式会社459を立ち上げ、今も小豆島で活動しています」。
こうして、隊員の数だけストーリーがあり、各地で個性豊かな活動が行われていることがうかがえた。

次に、現役隊員が「将来の夢」について語った。
内藤さんの夢は「自分の子どもに村のことを大好きになってもらうこと」。子どもが生まれ、その子が村を大事に思えば、村の状況も変わっていくはずだ。
峰さんが「多くの人が村を出てしまうんですよね。長野に一人でもこういう方がいると、心強いです」と話し、小田切さんも「移住、定住、永住へといくつかハードルがあるんですよね」と答える。
続いて、「アートと地域おこしはなかなか直結しないのですが、アーティストという職業が常陸太田市に根付いて、生活にもアートが根付いていけばいいなと思っています」と話すミヤタさん。
峰さんが「なじむのは大変ですよね。私も田舎育ちですから、わかります。人と人との触れ合い、コミュニケーションが一番です。一緒に漬け物を作ったりすることをやっていけば大丈夫ですよ」とアドバイス。
合口さんは「海女を続けながら、全国初のゲストハウスを作りたい」と、旅行者が交流しやすいよう、魚介類の作業を体験できるような仕掛けもしたいと話した。
それぞれが夢の実現に向けて、すでに一歩ずつ踏み出している。夢と現実を近づけていく行動力やアイデアに、参加者たちは刺激を受けたように見えた。

小田切さんが「OBの二人からみて、地域との付き合い方などでアドバイスはありますか?」とたずねたところ、眞鍋さんはこう返した。「行政から時には短期的な結果を出すことを求められると思いますし、その調整は難しいところですが、僕は“笑顔と愛嬌”で乗り切れることもあると思います。あまり焦らないでいい。中学3年生のための寺子屋の活動をしていますが、彼らが二十歳になったときに初めて目に見える形の結果が出るのかもしれません。10年、20年と長い時間をかけて結果が出ることもありますから」。

また佐藤さんは、地域づくりとはひとりよがりの行動ではなく、コミュニケーションが大事であることに言及した。「ぜひ、家族と仲間を大事にしてください。家族とは資金を提供してくれる自治体の職員のこと、仲間とは地域の人たちのことです。その双方に、まちを良くするためのアイデアや意見がある。隊員は、両者の間で上手に頑張り、コミュニケーションをとるのです。自治体、地域の人、隊員という三者の三角形をつくることこそが、隊員の大事な仕事」と語った。いかにこの三角形をデザインするか、このあたりが地域おこし協力隊の活動の肝になるのだろう。

現場からのリアリティあふれる言葉や体験を共有でき、参加者それぞれが地域おこしについて思いを馳せた時間になった。
最後に、峰さんがこう締めくくった。「地域の人とのコミュニケーションが大切ですよね。あまり迎合しようとせず、自分というものをしっかりもってコミュニケーションをとることができれば、本当の家族のようになれると思います」。

Stage3 地域おこし協力隊活動報告 地域づくりのヒントにあふれた実績

2会場に分かれ、現役隊員や隊員OBからのトークが行われた。
兵庫県朝来市での活動を報告したのは、担当職員の馬袋真紀さんと、隊員の吉原剛史さんだ。
馬袋さんは、隊員がいきいきと活動するため、大事にしていることがあるという。「隊員がやりたいこと、隊員自身ができる能力、地域の方が求めていること、この3つが重なっている部分を地域おこし協力隊にやってもらうことにしています」。この3つに共通することをしていないとひとりよがりの活動になりやすく、自分がしていることが地域に求められていなければ、孤独感にもつながってしまう。
また、隊員と行政と地域の方、3者の想いのマッチングのため、次のことを行っていると話した。「隊員の募集前には、地域の方がやりたいことを明確にします。募集段階ではそれをしっかり明記して志望者に活動イメージを伝え、任期中は活動計画をつくり、地域の方にそれを伝えたうえで進めていきます」。
一方、吉原さんは、地元食材を生かして人々が交流する「朝ごはんの会」を立ち上げた報告をした。地域内だけでなく、外部と地域との交流のきっかけにもなっているそうだ。吉原さんは今後のビジョンについてこう述べた。「農業、狩猟、観光業、イベント、宿泊業という5つの生業(ナリワイ)論という考え方をしています。それぞれで小銭稼ぎをして、5つ全体で食べていきたい。魅了的な農村をつくっていきたいです」。

広島県三次市の隊員OBで、現在は弘前大学に勤める野口拓郎さんは参加している隊員にこうアドバイスした。「まず、地域の相関図をつくることです。簡易版のロードマップをつくるといいですよ。担当だった川西地区は高齢化率が45%でしたが、広範囲に見れば近隣の広島市などに若者はいます。ですから、巻き込んでいくことは可能なのです。交流して近隣を巻き込みました。地域には、同じ行動をしても人によって受ける評価が異なるという厳しい一面もあったため、個別に『○○さん、頑張っていますよね』とフォローもしました。さらに、都会に住む人も巻き込むため、帰省した際に地域おこしワークショップを開催し、地元への想いを育ててもらったのです」。
そうした活動で大切なのは、キーパーソンの確保だという。「交友関係が広くて地元愛が強い人を見つけ、その人に地域の情報を発信しました」。地元の人の95%以上が購読している地方新聞の影響力の強さにも目をつけ、連携するよう心がけたそうだ。こうして地域の若者を育て、担い手にしていくことを実現した。「私は任期終了後、起業も定住もしていないけれど、こういう協力隊のあり方もあります。こういったノウハウを全国に生かしていきたい。今後は東北の地域づくりに貢献できたらと思います」。
島根県・海士町の隊員、奥田麻依子さんの働く島根県立隠岐島前(どうぜん)高校は「学校の存続こそが若い家族定住の必須条件」という考えのもと、地域と未来を創る人づくりを行う「島前高校魅力化プロジェクト」が注目されている。地域で生業や事業、産業をつくりだせる人材を育てるため、地域を生かして実践から学ぶ「地域学」を行っているのだ。「具体的に自分が興味をもったテーマでチームをつくり、分析して解決策を考え、地域の人をインタビューしています」。
今、生徒数は約2倍に増え、島留学の人が約4割を占めているという。「活動のなかで、子どもたちを変えていくのは地域との関わりだと実感しました。目の前の人が困っていることを感じると、当事者意識が生まれます」。

Stage4 参加者の声・まとめ 事例を聞き、交流できることが醍醐味

今回参加した協力隊員と自治体を合わせた団体数は、約200団体。地域おこしの現場を知る人ならではのトーク内容に、参加者たちは聞き入っていた。どんなことを感じたのだろう? 感想を聞くと、それぞれがさまざまな“お土産”を得たことが見えてきた。
「全国的な事例を見て、把握していたつもりでも知らない現状がたくさんあり、勉強になりました。行政同士が関わりをもって、全国の共通認識を高めていきたいです。このサミットのように、市町村同士が連携できる機会があるといいですよね。早速持ち帰って、上司や県の中枢部と少しずつ相談していきたいです」(自治体職員)
「みなさんのお話を聞いて、自分の地域では何ができるだろうと考えるきっかけを改めていただきました。ほかの隊員さんたちと話せて、仲間ができることもいいですよね。近隣の県くらいには行けても、なかなか東京に来る機会はないので」(協力隊員)
「任期が終わっている方のお話を聞ける機会はなかなかありませんでしたので、成功事例を聞けて、大変勉強になりました」(協力隊員)
「さまざまな事例を聞くことができ、どの地域にも共通する部分として、地域にとけこむための近道や仕事の進め方のノウハウが学べました」(協力隊員)

閉会後、参加者は交流をはかり、意見交換などをしていた。各自治体や隊員たちが“横のつながり”を得られることも、サミットの醍醐味のようだ。刺激を受けてそれぞれの地域へ帰っていった、協力隊員のみなさん。今後、さらなる活躍が期待できそうだ。

サミットの会場となった六本木ヒルズの大屋根プラザでは、28自治体の隊員が、地域の特産品や伝統工芸品などを販売するブース出展やミニステージでのPRを行い、フェア会場を盛り上げた。この日のフェアの来場者数は総勢2300人。自治体ごとに設置されたブースには、地元の採れたて野菜を使った料理や、伝統の機織物を現代風にアレンジした小物など、各地域自慢の商品がずらりと並び、法被などに身を包んだ隊員らが威勢よく来場者にPRしていた。

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小雨が降るこの日、フェアの会場は、都会ではなかなか手に入らない商品に興味を持った大勢の買い物客らで賑わった。
そんななか、「東京の人たちに、地方にも“A級”のグルメがあると知ってもらえるチャンス」と意気込んでいたのは、島根県邑南町の地域おこし協力隊員、小竹将矢さん(25)だ。

小竹さんが暮らす邑南町は農業が盛んで、肥沃な土壌で育つ野菜はどれも一級品。しかし全国的な知名度は低く、町の活性化につながってはいなかった。そこで地元の人たちは「邑南町を“A級グルメのまち”として売り出そう」と、町に本格的なイタリアンレストランをつくり、地域おこし協力隊員としてシェフを募集した。

もともと東京ではバリスタとして働き、もっと料理の勉強がしたいと思っていた小竹さんはその募集を見て、隊員になることを決めた。「収穫したばかりの野菜をお客さんに提供出来る邑南町は、料理人としては最高の環境」と小竹さん。フェアでは、食材の味を最大限に生かすため、味付けは塩のみという自慢のスープづくりに腕を振るった。

長野県泰阜村のブースでは、鹿をかたどった可愛いストラップが人気を集めた。このストラップは、町の有害鳥獣となっているニホンジカなど「けもの」の革を活用しようという「けもかわプロジェクト」の一環として製作されたもの。このプロジェクトを始めたのは、地域おこし協力隊の井野春香さん(27)だ。

井野さんは熊本県出身。大学で環境について学んだ後、泰阜村の地域おこし協力隊員として委嘱された。昔から動物が好きで、その中でも特にニホンジカに強い愛着を持っていたという井野さん。鳥獣被害の深刻さや捕獲を担う猟師の後継者不足の問題を肌で実感し、「せっかくの命を無駄にするのではなく、最大限に生かしたい」そんな思いから自ら猟師となり、ストラップをはじめベビーシューズやブックカバーなど、若い人たちにも喜ばれる革製品づくりに取り組んでいる。

フェア会場には、けもかわプロジェクトをPRする鹿のマスコットキャラクター「けもかわくん」も応援に駆けつけ、来場者の人気者に。井野さんは「フェアはたくさんの人に革製品の良さを知ってもらえる良い機会。商品を通して、鳥獣被害や環境問題について少しでも考えてもらえれば」と話した。

「ままかり×地域おこし×イタリアン」と書かれたポスターが一際目を引く岡山県瀬戸内市のブースには、白地に「ままチョビ」というロゴとブルーの魚があしらわれたポップなデザインの瓶に入った商品がずらりと並び、訪れた人の興味を引いていた。

ままチョビは「ままかり」という魚をアンチョビフィレ風に仕上げた商品。この商品を開発したのは、地域おこし協力隊の浅井克俊さん(40)だ。ままかりは岡山県では大変なじみの深い伝統食材ですが、食べ方にバリエーションがないため需要が広がっていなかった。そこに目をつけた浅井さんは、ままかりをイタリアンの食材に「リデザイン」し、おしゃれなパッケージで売り出した。

浅井さんは神奈川県横浜市出身。東京の広告代理店やタワーレコードで勤めた後、2012年に瀬戸内市にIターン。翌年には「地域の魅力を広告する」会社を立ち上げた。浅井さんは「地方にはいいものはたくさんあるけれど、それをデザイン・編集して発信する技術がいない。その技術を提供するのが僕の仕事だと思っています」と話す。

また、フェア会場にはミニステージも設けられ、12自治体の地域おこし協力隊員や自治体関係者らがステージ上で歌やトークを繰り広げ、会場を盛り上げた。

岡山県真庭市の住民有志らで結成した音楽ユニット「配膳ボーイズ」のメンバーは、かっぽう着姿でステージに登場。ギターやアコーディオンの伴奏に合わせ、オリジナル曲「あなたによそいたくて」を披露した。テンポの良いメロディーと、「残ったパンは机の中に置いて帰らないで」などのユーモアあふれる歌詞に、会場からは笑いや手拍子が起きた。

「配膳ボーイズ」は、国の重要文化財に指定されている真庭市の旧遷喬尋常小学校をPRしようと結成。彼らの企画、演出を行っているのが地域おこし協力隊員だ。「地域の主役は町の人たち。私たちは縁の下の力持ちでいたい」との思いで、ゆくゆくは全国進出も目論んでいる。

島根県邑南町のブースでスープを購入した東京都の男性(26)は、できたてのスープを口に運びながら、「野菜がすごくおいしくて、東京ではなかなか食べられない味」と満足そう。長野県天龍村の出身で、地元のブースが出ると聞いて訪れた東京都の男性(56)は「ホウレンソウや玄米パンなど、地元の食材が買えて嬉しかった。地域活性化の取り組みは応援したい」。Iターンや地域おこし協力隊の活動に興味があるという東京都の女性(23)は「東京では、毎日満員電車に揺られて仕事に行き、家に帰って寝るだけの生活。地方のゆったりした生活に憧れています。今日は協力隊員のみなさんに話を聞くことができ、とても参考になりました」と話していた。

全国各地の地域おこし協力隊員や自治体関係者らが集結した今回のフェア。参加者の地域を思う熱い気持ちが会場を包み、初開催にも関わらず大盛況のうちに幕を閉じることができた。この熱気が全国に波及し、全ての地方が元気になることを期待したい。

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