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田舎暮らし特集

清水 俊史朗

ひと

Q1.あなたの最近の取り組みについて教えてください。

今、一番力を入れているのは2015年4月にオープンした山梨県北杜市武川町における二地域居住用のシェアハウスのとりくみです。http://www.rcinst.org/
私たちは地域おこしに大切なのは、都会や他の地域から来られた方々が落ち着いて時間を過ごせる拠点づくり、そしてその地域特有の産業を通じて、人の輪を広げていくことだと考えています。武川町では南アルプスの雪解け水と長い日照時間を生かした農林48号という品種を長らく「武川米」として栽培してきました。
江戸時代には将軍家に、昭和初期には宮内庁の献上米にもなったほどの食味を誇っています。しかしながら農家の高齢化が進む中で、栽培に手間がかかることから生産効率の低い伝統農法は淘汰されつつあります。
これをみんなの力でもう一度再生して次世代に引き継いで行きたいという志を持った地元の農家数軒が集まり、昨年農業生産法人を立ち上げました。この素晴らしい米の生産地である武川町の素晴らしさを都会の人に実感頂く拠点として、空き古民家を賛同者の力をあわせて再生しました。
賛同者の方々は、この古民家を拠点にして農家の方の指導を受けながら、武川町で畑を耕したり田んぼの作業を手伝っていらっしゃいます。空き家になっていたこの民家を再生する前はオーナーも手放すことを考えていらっしゃいましたが、シェアハウスとして生き返った家に、将来はまた戻って来たいご様子です。さらに、この家を買いたいという声までも聞こえてきます。
この地域が気に入って近隣に土地を買われたご家族もあります。素敵な人が、またさらに素敵な人を呼ぶことを実感しています。

Q2.地方がさらに元気になるためには、何が大切だとおもいますか?

地域のイベントを例に考えるのが分かりやすいと思います。
色んな魅力的なイベントが各地で開催されて私たちもでかけたくなりますよね。山梨県の各地で開催されるサイクリングやマラソンのイベントでの集客は目を見張るものがあります。このようなイベントで、当日だけ人が集まっても、リアルな地域への愛着となるとまだすこし距離があるように思います。
私は、イベントの時だけではなく普段から、地元の人も他から来た人も一緒になって楽しめる機会があるとよいと考えています。例えば、田舎になると駅前の商店街でも空き店舗が目立っていますね。人口が減少している地域では店舗としては難しくても、駅前という立地はこの地域を訪れる人たちがここを拠点にしてサイクリングを楽しんだり、トレイルランニングに出掛けたりするには非常に望ましいわけです。運動に疲れた人たちに、地元の方がそこで獲れたお米のおにぎりを提供したりしたら、ぐっと距離が縮まると思うのです。
大事なのは、単なる器ではなく頻繁に利用される機能を持ち地元の人の存在がいつも感じられるような拠点づくり。人が集まり始めると、それがまた人を呼んで、気づいたら賑わいの中心になっているような仕掛けをしたいと思っています。

Q3.移住や地域おこしに、これから取り組もうとしている人に伝えたいことは?

一番大事なのが、地元の人への感謝の気持ちを忘れずに、自然体でお付き合いすること。
実は今年の春から、山梨県韮崎市にあるノーベル医学生物学賞受賞された大村智博士の生家をお借りして、2軒目の二地域居住用シェアハウスを開設することにしています。ここも農業体験や健康づくりの拠点になっていくはずですが、それに加えて写真講座を開講して文化的活動もして頂く予定にしています。そうすると、地元の農家の方々をはじめ地元で活躍するプロカメラマンなど、近隣の方々のご協力は欠かせません。ヨソモノが週末に来て勝手に騒いでいると見られたら、双方にとって不幸ですよね。私たちはもちろん、このシェアハウスの利用者の方々にも地域の人たちとの壁をできるだけ無くして色々な形で付き合っていただこうと思っています。
また、その地域での住人としての大先輩とつながること。基本的には都会の人に対して、地方は排他的です。まずはその方とその地域を好きだということをしっかりつたえること。
どんなことでも地域特有のやり方や考え方があるので、最初はとにかく教えを乞うこと。私の失敗談でもあるのですが、ある地方の農家の方たちと一緒に、ネット通販や都心部のマルシェで産品を直接販売したことがあります。私たちは直販をやるのであれば、その地域と消費者の間に永続的な繋がりを作ることに時間を費やすべきだと訴えたのですが、農家はどうしても生産活動に意識が集中するので顧客接点を深堀できずに一過性の商売に終わってしまう。意見をかなりたたかわせましたが結局中途半端で終わってしまったことがありました。そこはやっぱり腹をわってお互いをリスペクトし合うことに尽きるのだと思います。

profile

一般社団法人 田舎力研究所 代表理事 清水俊史朗。大学卒業後、日本の大手IT企業でシステムコンサルタントとして従事。海外留学ののち、米国系人事コンサルティング会社に勤務。ドメスティックな企業と、スピードと結果が全ての外資系企業の間を揺れた振り子は、日本のよさを改めて見つめなおした後に、「地方」に行きつく。

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