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田舎暮らし特集

山田昌弘教授が語る、結婚しない日本社会のこれから

——今の日本は、少子高齢化や都心への人口集中などさまざまな問題があります。地方での結婚を増やすことは、その一つの解になりうるでしょうか。

山田:私は、全国地域結婚支援センターの理事をやってます。茨城県、兵庫県、愛媛県などは10年以上前から結婚サポート事業を立ち上げています。愛媛県にいたっては、婚姻した10組に1組は自治体のサポートを受けているほど、マッチングシステムやボランティアの結婚相談アドバイザーの仕組みが確立しているんです。
また、都心在住の方とのマッチングイベントなどを開催すると、住む場所を変えても結婚したい、という方の多さを実感します。自営業の家に嫁いで事業をしてみたいという女性も、農業をやりたいから婿入りしたいという男性も一定数います。「農家に嫁/婿募集」としてもリアクションがなかったのに「農場の共同経営者募集」って書くと、女性の参加者が一気に増えたりします。やはり見え方が大事なんです。それは、友人や親戚に、堂々と言えるからなんですね。例えば「有機農業をしたいから農家に嫁いだんだ」などと。地方での結婚を増やす取り組みは今後もニーズがあると思いますね。

曽田:共同経営者…面白いですね!
私も以前は、地方に男性が行くのは抵抗があるのではないかと思っていたのです。弊社でも実際に、自治体と共同で「地元の女性と首都圏の男性」のマッチングイベントを開催したのですが、男性のチケットがあっという間に完売しました。その時に「男性でも地方に行ってでも結婚したいんだ!」って思いました。
当サイトの会員に「地方に嫁いででも結婚したいか」というアンケートを実施した結果でも、男女共に70%以上の方が地方に住んででもいいって思っているんです。

山田:そうなんですよ。ニーズがあるからマッチングの形態も多様化していますよね。自分に合っているサービスを見つけられるかどうかがポイントだと思います。
一方で、自治体として力を入れるべきは住宅支援だと思います。住宅支援はどの国においても少子化対策の基本で、住む場所が安定していれば安心して子どもを育てられます。自治体レベルで、例えばですが、空き家を活用して「新婚は○年間無料で住める」といった施策がもっと進めば、地方での婚姻率を上げられると思います。

曽田:地方への移住と婚活っていうと、弊社には地方の自治体から「首都圏の女性と地方の男性をマッチングさせたい」というご相談がよくあります。今までも自治体と共同で婚活イベントやコラボレーションツアーをやってきました。自治体の住宅支援政策と並行して、弊社では出会いの場を提供する方向で、もっとお手伝いをさせていただきたいと思っています。地方移住は一生ごとなので、結婚という大きなテーマで、好きな人が地方にいてそこに嫁ぎたいという流れを作り出していきたいです。

——今後、日本の結婚事情はどうなっていくと思いますか。

山田:日本は欧米よりも「インターネット上で(きっかけで)出会う」ことへの抵抗感が根強くありましたが、今では、だんだん薄れてきています。インターネット上で「趣味のマッチング」が図れるようになったことで、自分と趣味が同じ人と効率よく出会える世界になっていると思います。

曽田:地方ではまだまだ「インターネットなんて危険」という声は多いですが、日常での出会いが少ない地方こそ、インターネットは画期的な出会いのツールだと思うんです。

山田:この数年、地方で自治体の結婚支援サービス経由で結婚したカップルへのインタビューを重ねていますが、とくに地方においてオタク同士の結婚が多いなという印象があります。「趣味はアニメ」と情報をオープンにした途端、同じ趣味の女性からアプローチがあって結婚に至ったという例も何件も見てきました。ニッチな領域のマッチングもできるようになったからこそ、生まれた出会い。インターネットの恩恵ですよね。すごく幸せそうでしたよ。

曽田:同性愛の出会いも、インターネットの普及でとても簡単になりましたしね。
インターネット婚活業界でも条件でお相手を探す「婚活サイト」から、趣味や気の合う相手を探す「マッチングアプリ」というライトな出会いを提供するものに、少しずつ変化してきています。それによって、インターネット上での出会いのハードルが下がり、ユーザー層も低年齢化されるというメリットも生まれました。若いうちから「婚活」をはじめて欲しいという願いは、我々「婚活」に携わる者の総意でもありますので、そういった点では、歓迎すべき変化だと捉えています。

山田:そうですね。インターネットなどによってバーチャルな世界で満足するから、恋愛離れが進んで結婚が減っているという声もあります。今後は恋愛と結婚の分離がますます進んでいくでしょうから、インターネットによる「お見合い回帰」のように、結婚は結婚として、恋愛のように相手に過度に期待することなく穏やかにやっていく、というのでもいいのではないでしょうか。私としては、恋愛から結婚に至らなくてもいいから、みんな交際して幸せになったらいいと思うんですけどね。

山田昌弘 やまだ まさひろ

1957年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。社会学者。家族社会学・感情社会学、ジェンダー論を専門とする。東京学芸大学教育学部教授を経て、現在、中央大学文学部教授。「パラサイト・シングル」「格差社会」「婚活」などの造語を考案・提唱。2006年に「格差社会」で流行語大賞トップ10受賞。著書に『「婚活」時代』『パラサイト・シングルの時代』『少子社会日本』など多数。

曽田暁乃 そた あきの

エキサイト株式会社にて婚活サイト「エキサイト婚活」を運営。2013年から自治体向け婚活支援サービス「ふるさと婚活」を立上げ、自治体の婚活イベントのプロモーションを手掛ける。

エキサイト婚活 —— https://wedding.excite.co.jp/2003年にサービスを開始し、これまで累計会員26万人を記録。ネット婚活業界で真っ先に本人確認書類の提出必須を導入し、「会員数」「サービス」「機能」「信頼性」ともに高い評価されている。これまでに多数のメディアで「理想の相手を選びやすい、安心な婚活サイト」として紹介され、婚活ブームを背景に、多くのユーザーに出会いを提供している。

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