インタビュー隊員インタビュー

Vol.91 茨城県笠間市【現役隊員】    -   久保 葵 さん 「日常」こそ魅力―豊かな暮らしを伝えたい―

Q1. 地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

学生時代にグリーン・ツーリズムを学び、熊本や岩手を中心にフィールドワーク等で訪れていたことで、漠然と地域に関わることに興味がありました。卒業後も、プライベートでは故郷岩手のアンテナショップを拠点に、在京の岩手出身の仲間と地元を応援する活動を続けていました。そんな時「地域おこし協力隊」の制度を知り、学生時代の恩師に相談したところ、薦めていただいたのが茨城県笠間市。
笠間には関東初のクラインガルテン(※)があり、そこを拠点に活動できることや、東京から特急で1時間という「ちょうどよい距離感」も大きな魅力でした。
笠間での暮らしに不安はありませんでしたが、これまで都内で岩手の活動をしていたので、まわりからの反応は「なぜ茨城に?」でした。結果、故郷岩手はより大切な場所になり、そして笠間は第二の故郷に。今後、私にとって大切な場所が繋がるような活動にしていくことができればと思っています。

※クラインガルテン
klein(小さい)、garten(庭)
ドイツ語で「小さな庭」という意味をもつ市民農園のこと

笠間クラインガルテンのクラブハウスから見る里山の風景。春、山桜の淡いピンク色から萌黄色、初夏の新緑、秋に色づく紅葉…日々季節の移ろいを感じられる。

年末にご近所さんが集まる餅つきにお呼ばれ。外でみんなで食べる食事は格別。地元の方との交流が、協力隊としての原動力になる。

Q2. 日々の活動内容や嬉しかったこと、大変だったことを教えてください。

滞在型市民農園である「笠間クラインガルテン」を拠点に都市農村交流に取り組んでいます。
笠間クラインガルテンは、ラウベと呼ばれる宿泊滞在小屋がついた農園が50区画あり、週末にかけて都市部から利用者が訪れます。着任して一番大変だったことは、50区画の利用者の皆さんの顔と名前を覚えること(笑)。もちろん利用者はお一人ではなく、ご夫婦やご友人と利用しているため、一気に100人以上の方と出会ったことに!
はじめは大変でしたが、週末になると各ラウベを訪問したり、農作業のお手伝いをしたり、野菜のおすそ分けをいただいたりするうちに、応援してくれる方がたくさん現れました。そんな利用者の皆さんと地元の人の交流の場としてはじめた「ガルテンパブ」の取り組みや、地元よさこいチームと一緒に練習・参加した地元の夏祭りなどがきっかけとなり、新しい人と人の繋がりが生まれていることが喜びです。

活動拠点である、笠間クラインガルテン。ラウベと呼ばれる小屋の眼の前に農園が広がっている。

地元よさこいチームとクラインガルテンのコラボチームを結成。地元の人との新しい繋がりが生まれた。

Q3. その町の魅力について教えてください。

「農」「食」「陶」を中心とした、豊かな日常があること。
常陸国風土記の中で「まるで常世の国(理想郷)」と形容された茨城県の中央に位置する笠間市。りんごの南限、みかんの北限と言われ、年間を通して様々な農作物が収穫できます。また、豊富な食材を使った田舎ならではの食の魅力も。地元の人は「郷土料理は無い」なんて言いますが、お漬物や季節に合わせた保存食など、昔からの知恵が詰まった家庭料理こそ、その土地の郷土料理なんだと実感します。さらに、笠間焼という陶芸文化があることで、畑から食卓まで地のもので揃う豊かさを暮らしながら感じています。
そんな地元の人にとっては当たり前の日常こそ魅力だと気付いたのも、外から来た協力隊だからこそなのかなと思います。外の人はもちろん、地元の人が自分たちの日常を誇れるように、これからも魅力を発信していきたいと思っています。

地元農家さんの指導で行った、クラインガルテン利用者の田植え体験。自分で育てた農産物を味わえる豊かさを伝えたい。

食卓に並ぶのは、地元で採れた農産物と、地元のお母さんの家庭料理と、地元の笠間焼のうつわ。豊かな暮らしを伝えたい。

PROFILE /  茨城県笠間市【現役隊員】 久保 葵 さん(2019年3月掲載)

年齢
29歳
着任年月
2017年9月
出身地
岩手県
前職
フローリスト
隊員になってよかったことは?
職種や年齢、住む場所にかかわらず、関わる人や縁で繋がる人が増えたこと。
自分と向き合う時間ができ、理想としていた「日常を丁寧に暮らす」ことができるようになったこと。