Interview隊員インタビュー

大学2年時に甘楽町の地域おこし協力隊インターンを経験し、2026年4月に新卒で着任した地域おこし協力隊、髙瀨陽生さんの写真。

大学時代に地域おこし協力隊インターンを経験後、新卒で着任

群馬県甘楽町 髙瀨陽生さん

あの2週間が分岐点だった。名前も知らない町へ、半ば勢いで申し込んだ大学生が、協力隊になった話。

地域に関わる仕事に興味はあっても、最初の一歩をどう踏み出せばいいのかは、なかなか分かりません。どの地域に行けばいいのか、行って何をすればいいのか、地元の人が受け入れてくれるのか。

髙瀨陽生さんも、そのひとりでした。埼玉県さいたま市で育ち、東京の大学で地域について学びながら、「地域で活動していたい」という漠然とした気持ちを持て余していたといいます。そんなとき大学の情報共有アプリで見つけたのが、「地域おこし協力隊インターン」の募集でした。行き先は群馬県甘楽町。名前も知らない町でしたが、髙瀨さんは迷わず申し込みボタンを押し、大学2年の春休みの2週間をこの町で過ごすことになります。

「帰りたくない」。滞在最終日の活動報告会で、髙瀨さんは発表しながら泣いてしまいました。それから2年あまりが経ったいま、髙瀨さんはその甘楽町で地域おこし協力隊として暮らしています。あの2週間に何があったのかを聞きました。

髙瀨陽生さんのプロフィール詳細に併記されている写真。

髙瀨陽生(たかせ・はるき)

年齢
22歳

地域おこし協力隊

居住地
群馬県甘楽町
活動時期
2026年4月着任〜

埼玉県さいたま市出身。大学では国際地域学を専攻。大学2年の春休みに甘楽町の地域おこし協力隊インターンに2週間参加し、放課後子ども教室のサポートと農家での研修を経験する。

その後も月1回ほどのペースで通い続け、大学4年時にはインターンのコーディネーターを務めた。

現在は甘楽町の地域おこし協力隊として、農業実践、町のオリーブ畑の管理、農業系イベントの企画・運営に取り組んでいる。

 

Instagram @kanrano_kiwi_boy

【地域おこし協力隊インターンとは】
2週間から3ヶ月の期間、地域おこし協力隊と同じように地域協力活動に取り組める制度。原則として都市地域から過疎地域に滞在する方が対象となります。まずは短期間その地域に入って、活動してみることができます。
※自治体によって任期や内容は異なります。

地域おこし協力隊インターンに応募したきっかけについて語るセクション上の挿入画像

Q1. 地域おこし協力隊インターンに応募したきっかけを教えてください。

入り口は、田園風景でした。子どもの頃から田園風景がすごく好きで、この風景を守るにはどうしたらいいんだろうと考えたときに、まず思い浮かんだのが農業だったんです。ただ、農業は地域という大枠の中の一つの課題。まずはその地域を知ってみたいなと思っていました。

とはいえ、何から始めたらいいのかは全くわからなくて。そんなときに通っている大学の情報共有アプリで、甘楽町の「地域おこし協力隊インターン」の募集を見つけました。やりたいと思ったことはすぐやっちゃうタイプなので、半ば勢いでポチッと申し込みました。

惹かれたのは、活動内容が定められていなかったことです。役場のサポートを受けながら、自分自身が地域に入り込んで、やりたいことを探求できる。そこが一番大きかったです。

ただ、不安だったのはコミュニケーションでした。もともとそこまで外交的な性格ではないので、知らない地域で知らない人と関わるのが結構不安で。友達に話しても「協力隊って何?」という反応でしたしね。

地域おこし協力隊インターンに応募したきっかけや、田園風景・農業への興味について語るセクションの挿入画像。

Q2. インターンではどんな活動をしましたか?

主な活動は2つありました。ひとつは、放課後子ども教室のサポートです。役場からのオーダーで地域に3ヶ所あるうちの1ヶ所に、サポーターの先生として5日間ほど入っていました。

もう一つが、自分のやりたいこととしての農業です。興味があると伝えたら役場から農家さんを紹介してもらえて。ご高齢のご夫妻で、町の有機農業研究会を立ち上げた方のおひとり。ずっと甘楽町で有機農業をやっていらっしゃる、レジェンドみたいな方でした。

2月だったのでキウイフルーツの剪定の時期で、切っていい枝を見極める一番大事な工程を任せてもらいました。後半には「じゃあ向こうのエリアやっておいて」と言ってもらえるようになって、農業自体が初めてだった自分には、それも嬉しかったです。

このご夫妻は、本当に孫のように可愛がってくださいました。甘楽町での第三のおじいちゃん、おばあちゃんという感じです。あの二人がいなかったら、僕はここで協力隊になっていないと思います。

合間には地域の行事にも混ぜてもらいました。シェアハウスがある地区のお祭りに、地元の青年会の一員としておみこしをかついだり。

地域での活動って、仕事とプライベートの境界線が曖昧なんです。仕事じゃないところからも学びが得られるのが大きな魅力でした。

インターン期間中に行った「放課後子ども教室のサポート」と「有機農業を営む農家でのキウイフルーツの剪定などの研修」の2つの活動について語るセクションの挿入画像。

Q3. 2週間で一番心に残っていることを教えてください。

受け入れ農家さんのところで農作業を手伝ったときに、とても感謝されたことです。

収穫した後に残った作物を、根が張っているので片っ端から引っこ抜いて片付ける作業でした。普段のペースだと3日ぐらいかかるらしいんですけど、僕が手伝ったら半日で終わったんです。

自分としては大したことをしたつもりはなかったんです。でも農家さんは「ありがとう」「本当に助かった」と言ってくれて。こんなに感謝してもらえるんだなと、そこで初めて実感しました。若者の関わりしろって、こういうことなんだなと実感した瞬間です。

その日のお土産は段ボールでした。野菜をパンパンに詰め込んでもらって、両手で抱えて帰りました。

最終日には、活動内容を役場の人に発表する報告会があります。僕、その発表中に大泣きしちゃって。話していくうちに思い出がよみがえってきて、すごい楽しかったな、というのがこみ上げてきたんです。聞いていた役場の人もそれを見て泣いちゃって、変な空気になっちゃったんですけど(笑)。

2週間って最初は長いなと思っていたのに、行ってみたら本当に短かったですね。

インターン期間中の2週間で一番心に残っていること(農作業の手伝いで感謝された経験や、最終日の報告会でのエピソード)について語るセクションの挿入画像。

Q4. 役場からのサポート内容と、甘楽町での日常を教えてください。

インターンの担当としてコーディネーターの方がついてくれて、活動に伴走してもらいました。地域の人との交流会でも僕がうまく話に入れるように話を回してくれて、おかげで地域に入り込めたと思っています。やってみたい活動に関連した人を紹介してくれるのも大きかったですし、インターン期間中に生活していたシェアハウスの管理人さんが役場の方で、生活に必要なものを用意してくれたりもしました。

インターン期間中の1日のルーティンは、朝6時に起きてシェアハウスの周りを散歩するところから。9時から農作業、お昼は農家さんのお家で一緒にご飯を食べていろいろお話もして、夕方5時に切り上げる。帰ったら、もう一人のインターン生と管理人さんとの3人で晩ごはんを作って食べる。

食べていたのはほぼ野菜で、子どもの頃は好きじゃなかったのに、ここに来てからめちゃめちゃ美味しいと感じるようになりました。

甘楽町の一番の魅力は、人との壁がないところです。

人がいい地域はたくさんあると思うんですけど、僕にとっては甘楽町の人たちが一番関わりやすかった。下の世代に対しても、本当に同じ目線で話してくれるんです。

だから後半になると、地域の人に声をかけて、シェアハウスに集まってもらうこともありました。最初は役場の人がセッティングしてくれた交流会に参加する側だったのが、自分発信になっていって。そのときの繋がりが、今の活動にも繋がっています。

役場からのコーディネーターによるサポート内容や、シェアハウスでの生活、甘楽町の人々の魅力について語るセクションの挿入画像

Q5. インターンを終えてから、協力隊になるまでを教えてください。

地域おこし協力隊インターンを終えて一番変わったのは、地域に対しての解像度でした。それまでは、地域で仕事をするって何をするんだろう、そこで稼げるのかも全くわからない、というのが大きな不安だったんです。それが農業を経験する中で、ただ野菜を作って売るだけでは今後の農業は存続できない、農業を軸に地域づくりをしていきたい、という方向が見えてきました。

埼玉に戻ったあとも、1ヶ月後にはまた甘楽町へ行っていました。そこからは月1ぐらいのペースで通っていましたね。人との関わりは、その時だけの関係性では続かない。「帰ってきたので会えませんか」と声をかけて、定期的に会うことを意識していました。

大学4年のときには、役場から正式に委嘱を受けて地域おこし協力隊インターンのコーディネーターも務めました。今度は自分がインターン生のスケジュールを決める側。自分が経験した分、次の世代にもこの活動の素晴らしさを知ってほしいなと思っていました。

就職活動で企業を受ける選択肢も、もちろんありました。でも農家さんの引退時期もあって、タイミング的に今しかないと思ったので、迷いはあまりなかったです。親も、やりたいことを応援してくれました。

大学3年、4年といろんな地域を回った中で甘楽町を選んだ決め手は、応援してくれる人がいることです。他の地域だと、またゼロから積み上げていかないといけない。それに、僕にとってはここが一番地域の人との波長が合うというか、気を張らなくていい、自分らしくいられる場所だったんです。土台があった上で協力隊を始められたのは、すごく大きかったですね。

インターン終了から協力隊になるまでの経緯、甘楽町を選んだ決め手について語るセクションの挿入画像。

Q6. 地域おこし協力隊インターンへの応募を検討している人にアドバイスを!

「地域に行きたいけどどうしよう」「協力隊が気になるけど…」と迷うのは、「地域おこし協力隊インターン」に参加してからでもいいと思います。2泊3日の「おためし地域おこし協力隊」もありますが、もし長期で参加できるなら、2週間から3ヶ月滞在できるインターンをおすすめしたい。その土地で住民として暮らしてみて、初めて地域の空気感や人の雰囲気がつかめてきますし、途中で「これをやってみたいな」と思ったことを、さらに深く追求できます。

現地では、学生という肩書きを存分に押し出すといいかもしれません。地域の方からしても、なかなか若者と接する機会はないと思います。分からないことはこちらから積極的に聞いて、地域に興味があるという姿勢を見せに行くと、向こうも気さくに教えてくださる。難しく考えず、疑問に思ったことを率直に聞く。それだけで十分だと思います。

僕は応募前、大人とどう接したらいいのかが一番の不安でした。でも今は、どの地域へ行っても自分からコミュニケーションを取れる自信があります。あの2週間は、僕にとって人生の分岐点でした。あの2週間がなかったら、今の自分はないと思います。

だから、迷っているならまず参加してみてほしいです。もし甘楽町を選んでくれたら、今度は僕が受け入れる側として伴走します。

取材日:2026年8月

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