Interview隊員インタビュー
地域おこし協力隊インターン──現役大学生インタビュー
静岡県富士宮市 上川和心さん・廣島千匠さん住む場所も、給与も、地域との縁もある。ツテなしで飛び込んだ大学生2人が使った「地域おこし協力隊インターン」という制度。
地域に関わる仕事に興味はあっても、学生が実際に飛び込むのは簡単ではありません。滞在費はどうするのか、アルバイトと両立できるのか、そもそも地域の人が相手にしてくれるのか。
その壁をまとめて取り払うのが「地域おこし協力隊インターン」です。およそ2週間〜3ヶ月の期間、実際に地域に入って協力隊と同様の活動を行い、給与も支払われる。さらに「地域おこし協力隊」という肩書きがつくことで、地域の人との関係づくりもしやすくなります。
静岡県富士宮市でこの制度を活用し、地域でのインターンを経験した2人の大学生がいます。京都産業大学3年の上川和心さんと、慶應義塾大学3年の廣島千匠さん。専門的なスキルも地域づくりの実績もないまま大学を休学し、それぞれ約3ヶ月を富士宮で過ごしました。
発信とツアー開発、取り組んだテーマはまったく別。それでも2人が口を揃えるのは、「この制度でなければ、地域には入れなかった」ということでした。制度の何が2人を後押ししたのか、それぞれの言葉で聞きました。
【地域おこし協力隊インターンとは】
2週間から3ヶ月の期間、地域おこし協力隊と同じように地域協力活動に取り組める制度。原則として都市地域から過疎地域に滞在する方が対象となります。まずは短期間その地域に入って、活動してみることができます。
※自治体によって任期や内容は異なります。

Q1. 地域おこし協力隊インターンに応募したきっかけを教えてください。
上川和心
大学3年になり、そろそろ就職活動に向き合わなきゃと考えていた頃、「地域に貢献する仕事がしたい」と悩んでいました。そんな時にインターン経験のある友人からこの制度を教えてもらったのがきっかけです。
富士宮市には中高生の頃に観光で訪れたことがありましたが、最初は「自分のやりたいことが仕事になるのか」「地域の人と一緒にやっていけるのか」という不安でいっぱいでした。電話でのアポ取りや自発的なアプローチも苦手だったからです。
その不安を和らげてくれたのが、参加前に行った2泊3日の「おためし協力隊」。地域の人々とお話しして地域課題を聞いたり、私のやりたいことにアドバイスをいただけたことで「この地域で挑戦してみたい」と決意することができました。
廣島千匠
山梨県出身で「日本らしさが残る文化を大切に残したい」と考えていた僕にとって、歴史や文化が暮らしの身近に残る富士宮市は魅力を感じる場所でした。知人を介してこのインターン制度を知り、参加を決めました。
応募の決め手になったのは、自分の活動に100%集中できる環境があったこと。大学生の地域活動はアルバイトと掛け持ちしながら時間を捻出することが多いですが、この制度は活動に対する給与もきちんと支払われ、富士宮市では滞在する場所も用意してもらえました。自分の取り組みたい課題だけにフォーカスして暮らせる仕組みが、僕の目的にとてもマッチしていました。

Q2. 地域おこし協力隊インターンの活動ミッションを教えてください。
上川和心
富士宮市では、2泊3日の「おためし地域おこし協力隊」を経験した人だけが、「地域おこし協力隊インターン」に参加できる仕組みを取っています。「おためし」で地域の課題を知り、自分でインターンの活動内容を考えるというものでした。※2026年現在
私が企画した活動内容は「富士宮市の歴史や文化の発信」でした。若い世代にも興味を持ってもらうため、AIを活用して富士宮の神様を和服ギャル風のキャラクターにした「コノハナサクヤヒメ」を作りました。思い通りの画像を作るプロンプト(指示文)に1週間以上頭を悩ませながら動画やオンライン書籍を作り、7月末には若者向けのイベントも企画・実施しました。
最初は「観光客をたくさん呼び込むこと=地域おこし」だと思っていたんです。でも、縄文時代から続く歴史を調べ、地域の方々と対話を重ねる中で考えが変わりました。
大切なのは、歴史や文化をただの観光資源にするのではなく、暮らしの一部として誇りを持ってもらうこと。外から人を呼ぶ前に、まず地元に住んでいる人自身に富士宮の魅力を知り、愛着を持ってもらう発信が必要なんだと気づきました。
廣島千匠
僕が取り組んだのは、訪日外国人客などを対象とした「日本文化を理解・尊重してもらうための少人数ツアー開発」です。大人数でバスで観光地を巡り、写真を撮ってお土産を買って去っていくような「消費する観光」は、地域や自然を疲弊させてしまうと考えたからです。そうではなく、浅間大社や川の背景にある時代設定や日本人の精神性まで伝え、「守るべき尊いもの」として理解してもらえるツアーを作りたいと考えました。
1ヶ月目は徹底して地域の人々に会い、歴史や文化を「教えてもらう」姿勢でヒアリングに徹しました。2ヶ月目に友人を集めたモニターツアーで検証し、3ヶ月目には現地の宿泊事業者と連携して実際の外国人客へ試行提供を行いました。
移動手段などの制約もありましたが、「日本の文化を正しく伝える」という目的をぶらさず、手段を柔軟に変えながら形にしていきました。

Q3. 活動中はどんなことを大切にしましたか?
上川和心
以前の私は誰かに指示されるのを待つタイプでしたが、撮影許可を取るために自らお寺の住職さんに電話をかけたり、地域へ進んで足を運ぶようになりました。最初は電話をするのも緊張しましたが、急に入っていって「こういうことがしたい」と言っても地域の方は驚いてしまいます。
だからこそ焦らず、まずは顔を知ってもらい、自分という人間を知ってもらうこと。そこから少しずつ信頼関係を築く大切さを学びました。地道に関わりを重ねるうちに、「この人にも話してみたら」と一人の繋がりから応援してくれる地域の方の輪が広がっていきました。
廣島千匠
地域外から急に訪れた学生が「地域おこし」を語っても、地域の方には受け入れてもらえません。だからこそ、一住民として彼らの生活や文化に純粋な興味を持ち、教えていただくというスタンスを何より大切にしました。
また、自分がやりたい構想を言葉にして発信し続けたことで、協力してくれる事業者の方々と繋がることができました。
大学生が主体となって自分の事業を組み立て、事業者と協議し、実際にお金を介してサービスを提供する経験はめったにできません。想いを言葉にすれば人と繋がり、実現できるんだという大きな手応えを得ることができました。

Q4. 自治体からのサポート内容と、活動地である静岡県富士宮市での日常を教えてください
上川和心
撮影場所の許可取りで悩んだ時、市役所の担当者さんが関係部署との調整を手厚くサポートしてくれました。「地域おこし協力隊」という立場があることで、地域の方々にも安心して受け入れてもらえたと感じます。
滞在先は協力隊経験者の方が営む民泊で、大家さんに悩みを相談したり、他のインターン生と一緒にご飯を作って食べたりした時間が心の支えでした。車で食べに行った富士宮焼きそばの味や、毎日見える富士山の風景は最高の思い出です。地域で情熱を持って活動する大人たちとお酒やご飯を囲んで熱く語り合った時間は、自分の将来に対する不安を吹き飛ばしてくれました。
廣島千匠
自治体の方がフロントに立ってアプローチしてくださるおかげで、地域の方々とゼロからではなく関係値がある状態からスタートできたのは本当に大きかったです。特に地域のお年寄りの方々に対して、信頼を担保しやすい強みがありました。
生活面では、外国人客への案内を想定してヴィーガン対応の飲食店を開拓したり、商店街に湧き出る富士山の水をそのままボトルに汲んで飲むような日常を楽しんでいました。湧き水で遊ぶ子どもたちの姿など、無理をして作られたものではない「昔ながらの日本の暮らし」がそのまま残っているところが、富士宮市の大きな魅力だと実感しています。

Q5. 地域おこし協力隊インターンへの応募を検討している人にアドバイスを!
上川和心
インターンに参加する前は、特別なスキルもノウハウも無く、あったのは熱意だけでした。でも一歩踏み出してみたら、周りの大人たちが本当に親身になって支えてくれました。
スキルがなくても、熱意があれば絶対に大丈夫です。地域に愛着を持つためには一度現地に
行ってみることが一番なので、迷っている方はぜひ「おためし協力隊」や「地域おこし協力隊インターン」を活用して、まちの空気を感じてみてください。
廣島千匠
大学生がこれほど手厚いサポートを受けながら自分の事業に挑戦できる機会は、そう多くありません。飛び込んで一歩踏み出せば、失敗したとしても死ぬわけではありませんし(笑)、何かしらの学びは必ずあります。
一歩を踏み出せずにいるなら、この制度を活用して自分のやりたいことを言葉にし、周りに伝えてぜひチャレンジしてみてほしいです。
取材日:2026年7月









