Interview隊員インタビュー

Vol.43 山梨県甲州市 - 鶴岡 舞子さんはじける笑顔と元気、勇気、素直さを持って

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください

山梨県には、協力隊に入る以前に住んだ経験があり、大学時代に学んだ農業の世界を体験したく、キャンプインストラクターや、農業生産法人で働いていました。しかし、農業とは家族で「家業」として成り立つものであることを身を持って知り、女性ひとりで生計を立てていくことの大きな不安と挫折感を感じ、一度仕切り直そうと、地元東京に戻っていました。

そんな時、地域おこし協力隊の募集を知り、山梨県に住みたいという再起をかける思いで応募しました。

正直、「地域おこし」なんて大そうなことはできないけれど、自分のやりたいことを地域の人に受け入れてもらえて、定住するきっかけを作れればと思っています。

甲州市は、甲府盆地と山間地が混在するところで、桃やぶどう等の果樹栽培が盛んな地域です。

甲州市は、甲府盆地と山間地が混在するところで、桃やぶどう等の果樹栽培が盛んな地域です。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

甲州市は桃やぶどう等の果樹栽培が盛んですが、高齢化により耕作放棄地が年々増えています。

一年目は震災があったため、地域の方々と一緒にその耕作放棄地でジャガイモを育て、被災地へ届けるなど震災支援活動を行いました。

また、耕作放棄地には農業で厄介者の雑草がたくさん生えますが、その雑草ひとつひとつには名前があり、民間療法や飢饉のとき食糧にしていたことを知り、「雑草が資源になる!」「知識や知恵を次世代に繋げたい!」という思いが強まりました。

そうして現在、野草活用の勉強会の開催や商品開発・野草茶やハーブソルトを試作販売しています。なかでも「ネコジャラシのふりかけ」は県内外で話題となり、今年度は地元の高校生と一緒に作っています。さらに、地域の要望から野草の活用を本格的に取り組もうと、『やまなし野草研究会』を立ち上げ、保育園でも野草を使った特別給食を出しました。少しずつ雑草が有用作物として「食育・健康」というキーワードに結びつき始めていると感じています。

また、1年目からシーズン毎に商工会のプロジェクトに加わり、枯露柿という大きな干し柿の新しい食べ方や若者へのアプローチを地域の方々と試行錯誤をしていた活動が浸透し、若者や消費者と生産者が関わる「ころ柿文化祭」を開催することになりました。

そういった単年ではなかなか見えない成果も、積み重ねと継続が地域おこしの「きっかけ」になることを日々実感しています。

県内外で話題となった「ネコジャラシのふりかけ」です。耕作放棄地に生えている雑草を活用できないかと日々試行錯誤しています。

県内外で話題となった「ネコジャラシのふりかけ」です。耕作放棄地に生えている雑草を活用できないかと日々試行錯誤しています。

ある一日の活動
7:30 [起床] → 7:45 [朝食] → 8:30 [車で畑に移動へ] → 9:00 [耕作放棄地で野草を観察・採取] → 12:00 [昼食] → 13:00 [県内移住者ネットワークの打ち合わせ] → 16:00 [収穫物の選別・洗浄・保存作業] → 19:00 [公民館で地域の歴史・特産品の勉強会・打ち合わせ] → 21:00 [夕飯] → 22:00 [帰宅] → 24:00 [就寝]

Q3.実際に甲州市に暮らしてみた印象を教えてください

地域おこし協力隊として甲州市で暮らし始める前は、「山梨はよそ者を受け入れない地域性」と聞いていて、実際に住んでいたアパートも町会から外されており、地域のお付き合いというものが解らず孤立していました。

しかし、実際に地域おこし協力隊として一歩踏み出して暮らしてみると、真逆に近くて(笑)。とてもお世話を焼いてくれる方々ばかりでした。都会では無関心で何事もなく自分の世界観だけで過ごせていたかもしれませんが、自分から一歩進んで顔出すことだけで、こんなにも世間と自分は繋がるのかと驚きました。

また、地域おこし協力隊を応援してくれる、地域の応援隊がたくさんいて、耕作放棄地の野草採取を手伝っていただいたり、夕飯のご相伴をいただいたり、公私ともに支えてもらっています。地域の方々に自分の活動を認めてもらえて、期待していただいていることに感謝して、任期後も継続できるように努力していきたいと思っています。

少子高齢化、耕作放棄地、獣害、担い手不足、空き家…と、抱えている問題はどこも同じですが、それでも甲州市は朝市やフリーマーケットが中心となって、市民活動や地域コミュニティーが活性化している地域です。”街のなかの地域おこし協力隊”という新たな角度での役割が必要とされています。

野草を使った料理教室をほぼ月一回開催。旬の野草を使って、地域のべジ料理カフェのシェフとコラボレーションし、天ぷらだけでない、新たな野草料理を提供します。

野草を使った料理教室をほぼ月一回開催。旬の野草を使って、地域のべジ料理カフェのシェフとコラボレーションし、天ぷらだけでない、新たな野草料理を提供します。

Q4.今後の目標を教えください

今年で任期3年目です。残りわずかな期間となりましたが、退任後も甲州市に定住することが今の目標です。

任期の中でコツコツと積み上げて進めてきたプロジェクトを、地域の活力となるよう出来る限り継続しながら生活ができればと思います。せっかく形になってきた活動の流れを止めてしまうことが無いように、中間支援組織に今後の定住や就業、起業について相談しながら準備をしています。

また、自分がやりたい野草の知識を伝承する活動を、収益性のあるライフワークとして軌道に乗せていくことも目標です。しかし、これ一つだけでは生活ができるわけではないので、農業のアルバイトも並行して、しばらくは生計を立てていくことも考えています。

人生の流れに身を任せて、じっくりと根付けるように歩んでいきたいです。

枯露柿という大きな干し柿の新たな食べ方の提案を、若いお母さんたちと一緒に試行錯誤しています。

枯露柿という大きな干し柿の新たな食べ方の提案を、若いお母さんたちと一緒に試行錯誤しています。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください

地域おこし協力隊は、立派な事業の仕掛け人ではなく、ひとりの地縁も縁もないような若者が、新たな地域の一員として住民に耳を真摯に傾け、歩み寄って寄り添えるか、ひたむきで素直な態度から信頼を得ることができるかが大切なポイントだと思います。プライベートと仕事を住み分けることはできませんが、はじける笑顔と、元気と勇気と素直さがあれば、何処でもやっていけますよ!(笑)

私も初年度は協力隊の役割がなかなか理解できず、「どこの誰で何をしてくれる人なの?」という役割を説明する難しさを感じていました。しかし「自分はこういうことをしたい」をはっきり伝えることで、次第に地域での協力隊の立ち位置がはっきりし、いろいろなところで声をかけて受け入れていただけるようになりました。移住前に、ご自身の人生設計を意識した計画を持つことで移住先での仕事を作ることが目標となり、協力隊としての役割を自分で確立することで、制度を十分に活用したやりがいに繋がると思います。

移住は制度を使わなくてもできることですが、自分の生計を立てることを見据えた活動計画をご希望の自治体と相談することで、お互いに良い結果を結べるのではないかと思います。

「移住」という人生をかけて行動を起こしたご自身の熱意が地域へ伝わっていくと良いですね。

開放感のあるこの景色に毎日癒されています。

開放感のあるこの景色に毎日癒されています。

PROFILE / 鶴岡 舞子さん

鶴岡 舞子さん
年齢
29歳
着任年月
2011年7月1日
出身地
東京足立区
前職
農業従事者
隊員になって良かった事は?
自分が気づいて行動を起こしたことが、次から次へと人脈や物事に繋がっていく連鎖が、まるで化学変化のようでとても毎日が面白く、充実しています。

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