Interview隊員インタビュー

Vol.55 島根県隠岐郡海士町 - 奥田 麻依子さん教育の魅力化が地域の活性化に

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください

東京で働く一方で、地域での学びに取り組みたいと考えていたときに、偶然SNSで「島前高校魅力化プロジェクト」の存在を知って、興味を持ちました。

現場を訪問して話を聞く中で、『島全体が「学校」、地域の方も「先生」』というコンセプトや取り組み内容にますます共感していたところ、ちょうどプロジェクトに関わる地域おこし協力隊を募集すると伺い、応募しました。最初の訪問が2月で、4月には移住という急展開でした。

島という小さな場所だからこそ、地域の人とつながりながら、リアルで実践的な教育ができることなど魅かれた理由はたくさんありますが、「島の取り組みから日本を、さらには世界を変えていく」という高い志を持つ人が大勢いて、高校生自身も地域の未来を考えていることに感動し、この人たちと一緒にやりたいと思ったのが決め手でした。

現場に行くと共にICTも活用して、地域や世界の最前線で活躍する方から学び、グローカル人材の育成を目指しています。

現場に行くと共にICTも活用して、地域や世界の最前線で活躍する方から学び、グローカル人材の育成を目指しています。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

普段は、島前地域(海士町、西ノ島町、知夫村の三町村を含んだ地域)唯一の高校である隠岐島前高校を起点に、地元三町村の行政や地域住民などを巻き込んだ地域総がかりの教育に挑戦しています。

「グローカル人材」の育成を目標に掲げ、地域の実情を学び、課題解決に取り組む授業「地域学」や、地域の最前線で働く方や国内外の専門家との対話を重視したキャリア教育「夢探究」を高校の先生方と共に推進しています。

部活動でも、島で過ごす4泊5日間を通して、全国の中高生に人とのつながりを感じてもらう「ヒトツナギ部」や、生徒の興味や特技を生かして地域で活動したり、国際交流を企画する「地域国際交流部」という地域とのつながりの深い活動に携わっています。生徒と一緒に地域の中で活動しながら、私自身も地域のことを学ばせてもらっていると感じています。

船の見送りは何度経験しても感動的です。高校生と地域の方と一緒に作るヒトツナギは、毎回多くの出会いと気付きをくれます。

船の見送りは何度経験しても感動的です。高校生と地域の方と一緒に作るヒトツナギは、毎回多くの出会いと気付きをくれます。

ある一日の活動
8:00 [高校に出勤・授業準備など] → 9:45 [授業「地域学」・「夢探究」など] → 13:20 [高校の先生と授業の打合せ] → 14:20 [授業「生活ビジネス」など] → 15:30 [役場でプロジェクトメンバーとの打合せ] → 17:00 [部活動(ヒトツナギ部・地域国際交流部)のサポート] → 18:30 [帰宅 関係者との調整・翌日以降の授業準備] → 20:00 [帰宅]

Q3.実際に海士町に暮らしてみた印象を教えてください

海士町を始め、島前地域は「課題先進地域」であると来る前に言われました。その言葉からイメージするのは、停滞感・閉塞感。

しかし、実際には古き良きものを守りながらも新しいことに挑戦されている方がたくさんいました。また、その人たちがつながって一緒になって島の未来を考えていて、都会以上の勢いがありました。

思っていた以上に、隣の西ノ島や知夫里島で活動する機会も多く、同じ隠岐でも方言も違えば、雰囲気も違い、島の個性のおもしろさも改めて感じています。

高校生が一緒だからというのもありますが、こういうことをやってみたいと島の方々に相談すると、積極的に協力してくれたり、人を紹介してくれたりと、様々な形で応援してくださいます。地域と学校の距離が近く、地域が元気だからこそ学校での学びも充実したものになると感じています。

米作りを学ぶ授業もあり、一緒に参加させてもらいました。生徒はこの授業の経験を活かして島の農業をPRする動画を作りました。

米作りを学ぶ授業もあり、一緒に参加させてもらいました。生徒はこの授業の経験を活かして島の農業をPRする動画を作りました。

Q4.今後の目標を教えください

あと半年で協力隊としての任期は終えますが、まだしばらくはこのプロジェクトに関わらせてもらう予定です。

これからも島前高校、島前地域が魅力的であり続けるためには、日々目の前の生徒一人ひとりと向き合い、少しでも地域の方に喜んでもらえるような活動をしていくと共に、今の取り組みの持続性を担保し、さらなる飛躍をするための引き継がれる仕組みを作っていくことが必要です。そこにも力を注いでいきたいです。

また、教育の魅力化が地域の魅力化・活性化につながるという島前でのモデルを活かして他の地域でも実践してみたいという想いもあります。そして、将来的には、教えた生徒たちが島前を始め各地での人づくり、地域づくりの中核を担ってくれるようになっていることを期待しています。

高校をさらに良くするための議論を行う島前高校魅力化推進協議会では、地域の方や先生方と共にアイデアを出し合っています。

高校をさらに良くするための議論を行う島前高校魅力化推進協議会では、地域の方や先生方と共にアイデアを出し合っています。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください

仕事・暮らし・地域の環境など、自分が何を重視したいのかを考え、移住しようとしている地域でそれが実現できるのか検討した上で、移住をした方が良いのではないかと思います。

私の場合、それが仕事内容や一緒に働く人でした。事前に移住先の多様な立場の方々(上司や同僚になる予定の方や同年代の移住者等)とたくさん話をして、ある程度仕事や生活についてイメージし、納得した上で移住できたので、移住してからのギャップが少なかったです。

一方で、地域の事を一番知っているのはやはり地域の方々なので、最初は自分の想定にこだわりすぎず、求められることに対してある程度柔軟に対応していくことも大事だと思います。その中で、自分のやりたいことを実現するための道筋も見えてくるのではないでしょうか。

地域学の授業で、廃校を活用しようと高校生が地域の方と一緒に小学生向けのイベントを開催しました。

地域学の授業で、廃校を活用しようと高校生が地域の方と一緒に小学生向けのイベントを開催しました。

PROFILE / 奥田 麻依子さん

奥田 麻依子さん
年齢
28歳
着任年月
2012年4月
出身地
岡山県倉敷市
前職
東京で会社員(インターネット関連)
隊員になって良かった事は?
高校生が、熱い想いを持った地域の方々と一緒に活動する中で、自分に出来ることを本気で考え始め、大きく成長する瞬間に立ち会えること。自分も日々刺激をもらえること。

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