Interview隊員インタビュー

Vol.70 福井県越前市   -   小野寺 康浩 さん「自治体を超えて、他地域との連動性を作りたい」

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

きっかけは3つあります。

最初は、東日本大震災で自分の価値観を揺さぶられ、これからの人生を再構築する必要性を感じたことで、自分にしかできない社会貢献の仕方を見つけ、「生きた証」を遺したい、という想いが芽生えました。

次に、学生時代に埼玉県秩父郡の限界集落活性化プロジェクトを企画・運営する機会に恵まれ、その活動の中で知られざる地方の魅力を掘り起こして発信する楽しさを見出したことです。卒業後も仕事をしながら、週末は仲間と都内のシェアバーでカウンターに立って地場産品を提供する、という活動を続けました。

最後は、ヒッチハイクで全国を行脚中に福井県の持つポテンシャルを強烈に感じたことです。 特に今の自治体は伝統的な木造建築が数多く残る落ち着いた街並みが印象的で、しかも訪問直後に協力隊の募集が開始されたこともあり、運命的なものを感じました。

移住5か月前にヒッチハイクで福井に初上陸。地域資源の豊富さと人の温かさに感動しました。

移住5か月前にヒッチハイクで福井に初上陸。地域資源の豊富さと人の温かさに感動しました。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

「寺おこし」という、お寺を拠点とした地域コミュニティの再構築をメインに行っています。
全国有数の寺社の密集率を活かし、アートイベントや宿坊体験等を通じて地域のコミュニティスペースとしてのお寺の可能性を引き出すほか、お坊さんがガイドする路地裏まちあるきツアー「てらたび」などを企画し、地域とお寺の新しい関わり方を模索しています。
そのほか、古民家や旧料亭といった遊休スペースのリノベーションや、既存イベントのリブランディングなど、活動は多岐に渡ります。

3年という任期で、一からネットワークを構築し成果を出すのは至難の業。だとすれば、協力隊に出来るのは『パブリックマインド(「公」を考える気持ち)を刺激すること』だという認識のもと、一つでも多くの「新知見」を提示することを目標に活動しています。

戦災・震災に遭わず、伝統的な木造建築や魅力的な路地裏が残されたまちなみを、お坊さんがガイドして巡る「てらたび。」

戦災・震災に遭わず、伝統的な木造建築や魅力的な路地裏が残されたまちなみを、お坊さんがガイドして巡る「てらたび。」

ある一日の活動
6:30[起床・読書・朝食] → 8:10[徒歩で出勤(3分)] → 8:30[始業・SNS更新] → 9:00[社内ミーティング] → 10:00[古民家オフィスで来客対応] → 12:00[自宅で昼食] → 13:00[お坊さんと企画会議] → 15:00[お寺の本堂で資料作成] → 16:00[路地裏を巡って写真撮影しながら会社に戻る] → 17:15[終業] → 18:00[夕食] → 19:00[近隣市町のイベント参加] → 23:00[帰宅] → 24:00[就寝]

Q3.実際に暮らしてみた感想を教えてください。

全国を見渡しても、「はじめての移住」にここまで適したエリアはないのではないかと感じています。 私は地方移住の必須アイテムと言われる「車」を使うことなく、日常生活のほぼ全てを徒歩でまかなっています。最寄駅が小規模ながらターミナル的機能を有していることもあり、周辺地域や大都市圏とのアクセスも不便さは感じていません。コンパクトにまとまった都市機能と自然のバランスも丁度よく、ノンストレスで暮らしています。

「福井は幸福度No.1」とよく謳われていますが、まさにその通り。
(というより、「これといって不満がない」というのが一番大きいかも。)
「圧倒的に満たされている」というより、「素朴な良さを味わえる心の余裕」をみんな持っている。意外とこういうシンプルなところが、この土地に魅せられた一番の理由なのかもしれません。

活動範囲は駅から徒歩15分圏内。路地を一本入ると、不意にこんな美しい光景に出遭います。石畳がつづく趣深い寺町通りは、お気に入りの散歩スポットです。

活動範囲は駅から徒歩15分圏内。路地を一本入ると、不意にこんな美しい光景に出遭います。石畳がつづく趣深い寺町通りは、お気に入りの散歩スポットです。

Q4.今後の目標を教えてください。

他地域との連動性を作り出したいと考えています。
特に福井県内では、近年全国から注目を集める先進事例が数多く生まれています。活動していて感じるのは、福井はそういった活動の当事者とつながったり、彼ら・彼女らと連携して何かを起こすにはちょうどいいスケール感だということ。そして、自治体を超えて、面白いことに積極的に関わろうというフットワークの軽さを持っている方も非常に多いこと。こうした土壌を活かして、まずは県内での越前市のポジショニングを確立したいと考えています。そうすることで、将来的には金沢や京都といった地域と「古都」「伝統工芸」というキーワードでリンクさせるなど、より広域的な視点の中で活動に幅を持たせていきたいと考えています。

お寺を開放し、ヨガや写真展、会議やコワーキングなどを行うスペースとしての活用も提案。越前市を中心に他地域との住民同士の交流を図っています。

お寺を開放し、ヨガや写真展、会議やコワーキングなどを行うスペースとしての活用も提案。越前市を中心に他地域との住民同士の交流を図っています。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください。

『情報発信力』を鍛えておくことをオススメします。
「自分がどんな人間で、どんな興味があり、どんなことをしたいか」を明確に表現できることは、新しいコミュニティに入っていく上で大きな武器となります。さらに、コミュニティの内側へのPRだけでなく、外側にも発信することで、外部からの支援者も増えていきます。 そのようにして輪が広がって「うねり」を作り出せれば、多少のミスマッチが生じてもきっと大丈夫でしょう。

また、最初から大当たりを狙うのではなく、「小さな成功事例」を積み上げる視点を持つことも重要かと思います。どんなにいいアイデアでも、「共感」を得ることが出来なければ、拒否反応が生じます。よく地域おこしの文脈で行政や住民を「巻き込む」という言葉が聞かれますが、誰も得体の知れないことに「巻き込まれ」たくはありません。「この人ならこういう実績もあるし、大丈夫かも」という信頼関係を構築することで、自然な協力関係が生まれます。時間はかかりますが、戦略を練ってコツコツやった方が上手くいく場合が多いです。

ドラマー/パーカッショニストとしてバンド活動をしており、アートを軸に、地域活性活動を行うグループを結成しています。

ドラマー/パーカッショニストとしてバンド活動をしており、アートを軸に、地域活性活動を行うグループを結成しています。

PROFILE / 小野寺 康浩 さん

小野寺 康浩 さん
年齢
26歳
着任年月
2014年10月
出身地
岩手県九戸郡野田村
前職
介護用品メーカー営業職
隊員になって良かった事は?
自分にとって最高に楽しいことと、世の中の役に立つことがイコールで結べる。このことが、何よりの幸せです。

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