Interview隊員インタビュー

Vol.66 福岡県うきは市 - 小崎 尚美さん「木の大切さを伝えたい」

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

林学を専攻していた学生時代に、日本の森林は様々な原因で利用が進まない一方、海外では過剰な伐採が行われ、地球温暖化を助長していることを知り、木材自給率向上のために働きたいと思いました。その後就職先で、地域のために林業を盛り上げる方々を間近に見て、両親の出身地の九州で林業活性化に貢献することを目標にしました。地域おこし協力隊の制度を知ったのはその頃だったと思います。

移住に向けてハローワークや第一次産業ネット等で九州の求人情報を調べましたが、林業が盛んな所で仕事を見つけ、いきなり移住する勇気はなかったので、協力隊になろうと思いました。その後、ちょうどよいタイミングでうきは市が木質資源活用を担当する協力隊の募集をすることを知り、応募することを決めました。

全国から大学生を募集して実施したうきは体験ツアー「UKIHA Special JOURNEY」で、ヒノキの箸づくり。

全国から大学生を募集して実施したうきは体験ツアー「UKIHA Special JOURNEY」で、ヒノキの箸づくり。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

募集時のミッションは、農林業で発生する剪定枝や間伐材を農業用ハウスの暖房や薪ストーブ等に活用する仕組みをつくり、エネルギーの地産地消を進めることでした。ハウス暖房や木質バイオマスボイラーについて調査をしてきましたが、試行錯誤しています。最近は、木工や木育など、自分の得意なことを活かして山を身近に感じてもらう取り組みの準備を始めています。

うきは市では、現在は平野~山麓部に住む人が多いですが、昔は山間部が、竹製品の製造や林業で賑わっていたそうです。しかし、今もたくさん森林や製材所があるのに、多くの住民にとって木は遠い存在なのではないかと感じています。人工林や製材所が身近にない環境で育ち、林業・木工の分野に進んできた私の役割は、山と街をつなぐことだと思うので、一歩ずつ取り組んでいきたいです。

持木地区のたけのこ祭りにて。手入れされた竹林は明るいです。

持木地区のたけのこ祭りにて。手入れされた竹林は明るいです。

ある一日の活動
6:30 [起床] → 7:00 [朝食] → 8:10 [車で市役所へ] → 8:20 [事務作業] → 10:30 [経過観察中の現場へ]  → 12:00 [庁舎へ戻り昼食] → 13:00 [木工作業] → 16:30 [移動、夕食] → 18:30[講座に参加] → 22:00 [帰宅] → 23:30 [就寝]

Q3.実際に暮らしてみた感想を教えてください。

うきははやさしくて愉快な人が本当に多いです。自然はときに厳しくなりますが、普段は穏やかで、日々、山や畑、田んぼを見て季節の変化を感じています。本当にきれいな景色ばかりなのですが、住んでみて始めて、地道に畦の草刈や花の手入れをする方がいるからこそ景色が保たれているのだとわかりました。

着任前に来た時は、昼食場所が少ない印象を持ちましたが、最近は街にも山にも、おいしいごはんを食べられるお店が増えました。夜は、つながりのある方々と飲みに行くこともありますが、個人経営のお店がほとんどで、地元の食材を活かしたおいしい料理ばかり出てきます。 うきはに来てから少し体重が増えましたが、運動する場所もちゃんとあり、自分で体調管理すれば健康を維持できます。ここまで充実した毎日が送れるとは思っていませんでした。

一家三代にわたって大事に手入れされてきたツツジ。

一家三代にわたって大事に手入れされてきたツツジ。

Q4.今後の目標を教えてください。

うきは市の森林率は約50%で、森林のほとんどは八女市との境界にある耳納連山にあります。この山の景色が好きな住民は多いですが、山に行ったことがある人は意外に少なく、市内には製材所がたくさんありますが、住宅以外への木材利用は進んでいないのが実情です。

そのため、だれもが木を身近に感じられるよう、残りの任期では木育やグリーンウッドワークに取り組みたいと思っています。観光やデザインを担当する協力隊に助けてもらい、木製のお土産品づくりも始めました。また、うきはの山で体験できるツアーとして、火起こしや薪割り体験なども取り入れてみたいです。

月一回程度行われる、新川田篭地区の山里ひめはる連絡会。

月一回程度行われる、新川田篭地区の山里ひめはる連絡会。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください。

地方への移住を考えるとき、今は多くの自治体が移住支援などをしていて、どの地域を選ぶか迷うでしょうが、現地を歩いてみたり、地元の方と話したりすると、なんとなく自分に合うかどうかがわかると思います。 私の場合、九州のどこかに移住することは早くから決めており、その中で3市町くらいに絞った後、直感でやっぱりうきはだな、と決断しました。よく調べ、最後は直感で決めると良いのではないかと思います。

今、日本の中山間地には農林業を維持することが難しくなっている所がたくさんあります。そのような地域で何かしたいとき、地域おこし協力隊の制度はよいきっかけになると思うので、ぜひ飛び込んでみてください。住んでみないとわからないことがたくさんありますよ。

山の神祭りのための注連縄づくり。

山の神祭りのための注連縄づくり。

PROFILE / 小崎 尚美さん

高塚 都喜子さん
年齢
30歳
着任年月
2014年7月
出身地
神奈川県
前職
森林組合
臨時職員
隊員になって良かった事は?
うきはの豊かな自然や歴史的な空間にいつでも行けること。地元のお祭りなどに参加させてもらい、いろいろな人と出会えること。自分のしたいことを一つずつ実現できること。

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