Interview隊員インタビュー

Vol.54 広島県神石高原町 - 小埜 洋平さん地域の「入り口」を作る仕事がしたい

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください

協力隊に応募する二年前、大学を辞めて茨城の有機農場で居候をしており、そこで「自給自足は世のためになる」ということを学びました。

それと同時に、「自分一人ではだめだ。自給自立的な地域を作ることが重要だ。」とも考え、こんな何の経験もない若造の手でも借りたいと言ってくれて、地域づくりに関わらせてもらえそうな過疎地域を探していました。

そんな時、たまたま出会った人のルーツが神石という過疎の進んだ場所だということで連れて行ってもらい、見学して回った末に、名前が気に入ったのでここに人生をかけることにしました。

神石に住むために、まずは、ちょうど募集していた有機農業研修生に応募しました。廃校の小学校に住んで、一年間農業塾生をしながら「地域おこしをしたい」とまわりの方々に言って回っていました。そうしていたら、先輩協力隊を紹介されて、誘っていただいたので、晴れて応募することとなりました。

大学生と一緒に地域の運動会に参加。

大学生と一緒に地域の運動会に参加。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

今年の夏、大学生たちに地域で聞き取りをしてもらい、地域の細かい課題や特徴、魅力などを探り出しました。これを実施したことで、ようやく「地域への理解の深め方」を知ることができたような気がします。地域を理解しはじめると、今まで「とっつきにくいな」と思っていたようなことでも、それはその地域のおもしろい特徴で、むしろ魅力的だと思えるようになってきました。

今後は、大学生たちが作ってくれた糸口をしっかりと押さえ、地域住民がハサミを動かしていける切り口にしていきます。

また、いくつかある担当地域に向き合っているうちに、神石高原町の中でも地域ごとの色あいの違いは大きいことに気が付きました。その違いを見るのも日々の楽しみのひとつです。

一年と数か月が経って、ようやく地域のツボが見えてきた今、地域にもっと寄り添った形での活動を具体化していきたいと思っています。

神石高原町の小野の地域おこしを目的とした大学生グループを結成。

神石高原町の小野の地域おこしを目的とした大学生グループを結成。

ある一日の活動
8:30 [役場支所出勤] [メール等確認] → 9:00 [週末会議(一週間の活動内容や地域の動きを報告し意見を交わす)] → 12:00 [昼食] → 13:00 [域学連携事業の資料作り] → 14:30 [県内大学への道中、他の協力隊と打ち合わせ] → 16:30 [大学にて域学連携のミーティング] → 21:30 [帰宅] [facebookやメールで連絡等]

Q3.実際に神石高原町に暮らしてみた印象を教えてください

初めて来た年は、「冬は厳しいけぇね」「冬は大変じゃけ」と、それはもう脅されましたが、水道管が破裂するのが困るくらいで、暖房がなくてもどうにかなりました。

また、町内に唯一のコンビニは21時で閉まります。大変だねとよく言われますが、21時以降に外に出る用事なんて、星を観るくらいです。さらに、暇のある時は、近くのおじいさんが将棋の相手をしてくれて、美味しい手打ちそばや秋刀魚寿司をご馳走してくれます。

こうしてすっかり神石に馴染んでしまったため、標高200~500mほどのこの地域から街に降りると、特にじめっとした夏場はゲンナリします。 もう、他の街では生きられない体になってしまいました(笑)

神石高原町の秋祭りでは神儀という伝統的踊りを行う。現在は後継者が少なく行えなくなってきている地域が増えている。

神石高原町の秋祭りでは神儀という伝統的踊りを行う。現在は後継者が少なく行えなくなってきている地域が増えている。

Q4.今後の目標を教えください

今年、一つの地域で空き家管理を仕事に出来ないかという声があがり、JOINの主催する起業・事業化の研修会に参加させていただき勉強して、事業内容を考えました。協力隊になった当初から、任期後は神石高原町の入り口を作るような仕事をしたいと考えおり、自分自身の方向性と一致していたので、事業内容を考えるのと一緒に自分がこの空き家管理をさせてもらえることとなりました。

この空き家管理事業を、まずは任期中に最低限の収入を得られるように助走をつけます。任期後は、それを足掛かりにして、空き家バンクとの連携や、移住者を受け入れる地域側の世話役との顔合わせが出来る仕組みや、各地域ごとに特徴や移住するうえでのポイントをまとめたいと計画しています。

何年先になるかわかりませんが、将来的には、神石の出身者が家を売っても気軽に帰ってきて泊まれるような安宿を作り、同時に移住を考えている人が中期的に泊まれるような場所にしたいとも考えています。

また、各担当地域の関わりの中で、任期中にここまではやっておきたいというものがあります。優先順位はなかなか付けづらいですが、中途半端にならないよう、各地域精一杯やっていきたいと思います。

しんさかという地域で大学生が三泊四日合宿し、聞き取りを行った。写真はまとめ作業をしている様子。

しんさかという地域で大学生が三泊四日合宿し、聞き取りを行った。写真はまとめ作業をしている様子。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください

地域おこし協力隊は、本当に様々なジャンルの知識が必要だと実感しています。そして、知識を得れば得るほど、どんどん地域が深く見えておもしろくなってきます。

ちなみに、僕が今勉強したいと思っているのは、カープについて。広島県では方言を覚えるよりも先に、カープの選手を覚えたほうが会話が弾むはずです(笑)

農業、歴史、地域づくり、福祉、そして何より地域について。地域おこし協力隊は、都市の感覚やスキルで地域文化を上塗りするのではなく、地域を学び、かみ砕き、その土地の文化を磨いていく姿勢が重要なのではないかと思っています。

それと同時に、「地域おこし」の広義的意味は大きな力を持つと思います。何のための地域おこしなのか? 地域のためであるのはもちろん、日本のため、世界のためであるとも言えることが、協力隊自身の強力な原動力にも、地域の躍進にも繋がるはずです。

神石地区の歴史を探る会に時々参加して勉強させてもらっている。写真はお寺の住職さんに話を聞いている。

神石地区の歴史を探る会に時々参加して勉強させてもらっている。写真はお寺の住職さんに話を聞いている。

PROFILE / 小埜 洋平さん

小埜 洋平さん
年齢
23歳
着任年月
2013年6月
出身地
神奈川県横浜市
前職
(無職)農業研修生
隊員になって良かった事は?
一所懸命で自給自立的な地域づくりという自分の人生目標への沢山の学びと、歩を進められているという実感を得られていることです。

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