Interview隊員インタビュー

Vol.46 長崎県壱岐市 - 合口 香菜さん「海女さんになりたい」―海へのひたむきな思い

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください

「海女さんになりたい」という気持ちが先行し、その夢を掴むための手段として「地域おこし協力隊」がありました。

もともと、岩手県の陸前高田市出身。海に囲まれた土地で育ち、父は漁師という環境だったので、海は身近な遊び場でした。東京で10年近く百貨店店員として働いていたのですが、東日本大震災の際、家族と長崎市に一時避難をしたのをきっかけに、「自分はどこで、何をしたいのか」考え始めました。

生活拠点を長崎市に移したあと、「キレイな海とおいしい魚に囲まれた生活がしたい」という思いがどんどん大きくなり、「海女さんになりたい」とはっきり将来像を思い描くようになりました。その実現可能性を探っていたときに、「地域おこし協力隊」として海女さん後継者を探していることを知り合いづてに聞き、チャンスをくれるこの島に住もうと決意しました。

八幡浦海中に祀られる六地蔵「ほらはげ地蔵」。満潮時は胸まで海水に浸かりながら、壱岐の海を見つめる。

八幡浦海中に祀られる六地蔵「ほらはげ地蔵」。満潮時は胸まで海水に浸かりながら、壱岐の海を見つめる。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

漁期は5月~9月なので、その時期はほぼ毎日、海にもぐります。キャリア30年以上の先輩海女さんに教わり、勉強の日々。まずはやってみて、間違っていたら指摘してくれるのですが、少しずつ成長を感じられるのがうれしい。海から大自然のエネルギーをもらえるし、心も体もとても元気に過ごせています。

NHK朝の連続ドラマ小説「あまちゃん」の影響で、取材が多く入るなど、想定外のことがいろいろと起こりましたが、壱岐の認知度を高めるチャンスが転がってきたと思ってできるだけ対応できるようにと意識もしていました。

10月からは、壱岐市の魅力をもっと広めるために、イベントパンフレットや観光マップをつくったり、島の特産物を使った加工品を開発したりと、市のPRに関わることは何でもやっています。1年前まで、壱岐島のことをまったく知らなかった“よそ者”なのですが、だからこそ、新鮮な目で、島の魅力に気づけるんじゃないかと思っています。

漁の様子。海からエネルギーをもらって、心も体も喜んでいるように感じる。

漁の様子。海からエネルギーをもらって、心も体も喜んでいるように感じる。

ある一日の活動
6:00 [起床、朝ご飯を食べ、昼食の準備] → 7:00 [漁場に向かう] → 8:00 [海にもぐる] → 10:00 [小休憩] → 12:00 [漁を終える] → 13:00 [出荷にいく] → 15:00 [帰宅。漁をした服を洗濯して翌日の準備] → 16:00 [夕食の準備] → 17:00 [夕食] → 20:00 [就寝]

Q3.実際に壱岐島に暮らしてみた印象を教えてください

魚も野菜もお米も、とにかく食べるものすべてが本当においしい!!「毎日、新鮮な魚を食べられる暮らしがしたい」という思いが実現し、毎食、そのおいしさ、ありがたさをかみしめています。

たったひとりで島に移り住むのはさみしいかなと思ったのですが、壱岐の人たちは、誰も私を放っておかなくて(笑)、 “独り”を感じることはほとんどありません。

“すれ違う人”の量は、東京と比べものにならないけれど、“人との関わり”は、島の方がずっと深くてあたたかいんじゃないかと思いますね。「いっぱいとれたから」と魚や野菜をどっさりくれる海女の先輩や漁師さんがいて、人とのつながりには、とても恵まれています。

海女さんと乾杯。もぐり方、獲り方、道具の使い方など、いつも丁寧に教えてくれる。

海女さんと乾杯。もぐり方、獲り方、道具の使い方など、いつも丁寧に教えてくれる。

Q4.今後の目標を教えください

漁に出て、獲ったものを出荷する毎日を繰り返すうちに、食べている人の顔が見たい、という気持ちが強くなってきました。将来的に、ゲストハウスや民宿のような場をつくって、そこで自分が獲ったものを食べてもらったり、「ウニかき体験」をしてもらったりと、壱岐の魅力にダイレクトに触れる場の提供ができたらいいなと思っています。

観光にきた旅人がいる空間に、地元の人がふらっと寄って会話が生まれたり、そんな“つながる場所”を創り出せたら…と考え中です。

初収穫の雲丹の雲丹かき作業。雲丹のひとつひとつがなんだか可愛らしく見えます。

初収穫の雲丹の雲丹かき作業。雲丹のひとつひとつがなんだか可愛らしく見えます。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください

その土地で暮らしてきた地元の方が大切にしているものは何かを、理解しようとする姿勢は必要だと思います。

私が隊員になった同じタイミングで、「あまちゃん」が大ブームになり取材が殺到したのですが、海にもぐることは、先輩海女さんにとって、今までずっと繰り返されてきた日常なんです。

注目されることはいい面も多い一方、メディアの演出が実生活と少し食い違うこともあり、地元の方には葛藤があったかもしれません。自分が入ってきたことで盛り上がることもあるし、予期せぬ変化も生まれる。既存のものにきちんと配慮し、尊重することが大事だなと痛感しました。

また、私もそうでしたが、せっかく地域おこし協力隊として来ているのだから、できるだけ広く、外に外に情報を発信しよう、と肩肘を張って思いがちです。

でも大切なのは、“地元の人が「この島はすばらしい!」と思える情報”を発信することなのかなと思い始めています。地域おこし協力隊だからこそ、壱岐のことを客観的に見ることができる。地元の人にとって当たり前の食事や当たり前の景色が、すばらしい魅力に思えるという、私ならではの視点を大事にしていこうと思えています。

大好きな海と新鮮な魚、あたたかい島の人たちに囲まれて充実した日々を送る。

大好きな海と新鮮な魚、あたたかい島の人たちに囲まれて充実した日々を送る。

PROFILE / 合口 香菜さん

合口 香菜さん
年齢
28歳
着任年月
2013年4月
出身地
岩手県 陸前高田市
前職
百貨店勤務
隊員になって良かった事は?
自分の地元がより好きになり、故郷のために何かしたい、何ができるだろうと考えるようになった。

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