Interview隊員インタビュー

Vol.73 群馬県下仁田町   -   沼田 香輝 さん「食を通して、地域の伝統を守りたい!」

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

もともと東京の飲食店で複数店舗の店長として、朝から夜遅くまで忙しく、休みの無い働き詰めの毎日を過ごしていました。
そういった生活に疑問を感じているなか、偶然電車に貼られている地域おこし協力隊のポスターを目にしました。興味を持ち調べてみると、食の伝承をテーマとした地域おこし協力隊を下仁田町で募集しているのを知りました。『食』に関わる仕事をしたいという強い想いがあったことと、東京で培った経験と、下仁田町で長年続けている飲食店のノウハウを吸収することで「何か出来ないか」と考え、応募しました。

下仁田町に移住し協力隊として働くことに不安がなかったわけではありませんが、家族や職場の上司、当時同棲中だった妻の後押しもあり、決心しました。

注文が入ってからその都度、餃子の皮を手で伸ばします。53年間続く技を継承します。

注文が入ってからその都度、餃子の皮を手で伸ばします。53年間続く技を継承します。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

食の伝承がミッションで、その大きな柱に「経営者の高齢化と後継者不在により、存続が困難な飲食店の味を継承する」ことがあります。地元で53年間愛される「一番」の味を体得するため、主な活動は店舗での修行です。看板メニューのタンメン、ギョウザなどを求め連日多くのお客様がいらっしゃいます。お店のお師匠さんはもちろんの事、お客様や地域の方々など関わる全ての方々が温かく、常連さんのなかには修行のためにと「沼田君のつくったギョウザ僕に出しなよ」と言っていただくこともありました。出前では、店に来ることができないお客様とも触れ合うことができたり、徐々に任せていただけるメニューが増えてきたりと日々やりがいを感じています。

最近では、地元高校生や他の隊員と町の特産品をいかしたオリジナルメニューを企画したり、地域の郷土食を学んだりと活動の幅も広がりつつあります。

忙しい昼時の合間にも、笑顔が絶えません。

忙しい昼時の合間にも、笑顔が絶えません。

ある一日の活動
9:45 出勤掃除 → 10:15 仕入買い出し → 10:30 餃子生地仕込み → 11:00 開店 → 14:15 休憩 → 15:00 店内清掃 → 16:45 休憩 → 17:00 開店 → 18:45 終業

Q3.実際に暮らしてみた感想を教えてください。

お店の師匠や地域の皆さんから本当に親切にしていただいています。例えば、『おすそ分け』です。材料である野菜から手作りのお惣菜など、様々な物をいただきます。私も出かけた際には、いただいた方にお土産を選ぶ楽しみが増えました。着任してから一年間車を買わずに過ごしました。クルマ王国群馬といわれるほど、車が必要不可欠といわれていますが、特に不便を感じることはありませんでした。
ただ、都会でイメージしていた田舎暮らしと異なっていることは、ゆったり過ごす事はあまりなく、やることを見つけてしまえば、毎日本当に忙しいです。気持ちを込めて行動すれば、必ず何かしらの形で自分に返ってくることが本当に多いことにびっくりしました。それと、地域のイベントは意外にたくさんあります。最初こそよそ者がいきなり輪に入ることに気後れもしましたが、勇気と誠意をもって行動していけばちゃんと受け入れていただき、楽しくイベントに参加できました。

出前が定番の下仁田町では、地域を知ることができ、より多くのお客さんと触れ合える貴重な機会。

出前が定番の下仁田町では、地域を知ることができ、より多くのお客さんと触れ合える貴重な機会。

Q4.今後の目標を教えてください。

お師匠さん達の味をしっかりと受け継ぎ、常連さんやお客様ががっかりしない味をご提供していくことが目標です。欲を言えば、お師匠さん達の味の素晴らしさをより多くの方に知っていただき、さらには、町の方に楽しんでもらえるような店を受け継ぐことです。
私事で言えば、妻や家族が安心してこの町で暮らしていけるようにすることです。そして、自分の活動に期待していただいている方々を裏切らないよう、今できることをできうる限り全力で努めていくことです。
挙げていけば本当にキリがないのですが、ポジティブに物事を考え、不安要素を一つひとつ取り除きながら、一歩ずつ前に進んでいかなければならないと感じています。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください。

日々の活動のなかで、お師匠さんに良く言われている言葉に「俺が俺がの我(が)を忘れ、おかげおかげのげ(気)で暮らせ」があります。

慌ててしまったり、辛い思いをしたりすることもありますが、様々な方にお世話になっていることを忘れず、笑顔で過ごしていければ、努力を認めてくれることが田舎の良さだと肌で感じています。
自分の体験談で言いますと、笑顔で誰にでも常に挨拶をすることです。どうしても、私たちは突然来たよそ者には変わりありません。もちろん気持ちが凹んでいるときなどは大変だと思いますが、そこは踏ん張って笑顔で挨拶をし続けてください。毎日挨拶を交わすだけで、徐々に町の一員として仲間に入れてもらえる事が多いと感じています。

群馬県内で食される麺料理「おっきりこみ」を地域の方から教わります。地域固有の食文化の伝承もミッションの大きな柱の一つ。

群馬県内で食される麺料理「おっきりこみ」を地域の方から教わります。地域固有の食文化の伝承もミッションの大きな柱の一つ。

PROFILE / 沼田 香輝 さん

沼田 香輝 さん
年齢
24歳
着任年月
2016年2月
出身地
神奈川県
川崎市
前職
会社員
隊員になって良かった事は?
人の温かさを感じることが多く、妻との会話時間が増えたこと。

記事の続きを読む