Interview隊員インタビュー

Vol.71 千葉県館山市   -   岸田 一輝 さん「次世代のまちづくりを考え、実践する」

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

2009年から2010年まで、千葉大学大学院の学生として館山市の中心市街地と里山地区の研究プロジェクトに参加しました。その後、一度東京の都市コンサルタント会社に就職し、日本各地で復興まちづくり計画や都市開発等をサポートするコンサルタント業務を行っていました。この頃から、館山市でまちづくりの仕事を自分で生み出し、実践する活動を行いたいと考えるようになりました。
さらに、2013年に館山市まちなか再生支援事業に千葉大学大学院特任助教として参加し、学生と一緒に中心市街地の調査および実践研究を行い、戦略策定に携わることができました。同事業の研究成果や得た技術を館山市の活性化のために活用したいと考え、地域おこし協力隊に応募しました。

地元の方々との繋がりを大切に、楽しみながら活動しています。

地元の方々との繋がりを大切に、楽しみながら活動しています。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

館山市の長須賀地区で、まちなか再生事業を担当しています。
ここでは建築学や都市計画学をはじめ、様々な学問分野でまちづくりに関する知識を養うことができますが、地域には抽象的な議論の中では知り得ないことが多々あると感じています。
特に、現地では次世代のまちづくりの参考になりそうな地域活動があります。私達が活動の中でテーマとしている「道楽」というキーワードも、館山市の住民の方々の暮らしぶりを観察することで見出したものです。住民の方々は、知らず知らずのうちに自分のまちを感じ、まちを最大限楽しむことができるような行動をおこし、様々な活動をしています。これは館山市だけではなく、どの地域でも実際におきていることです。
このような活動をつぶさに観察し、次世代のまちづくりのあり方を考え、実践していく必要があると感じています。

地域のキャンドル・アーティストを講師として招き、こども達と一緒にキャンドル作りワークショップを開催した様子です。

地域のキャンドル・アーティストを講師として招き、こども達と一緒にキャンドル作りワークショップを開催した様子です。

ある一日の活動
6:30[起床]→8:30[建築およびまちづくりに関する学習・まちづくり企画]→12:00[昼食]→
13:00[老人会などの地域組織との交流・建築およびまちづくり実践者との交流]→
18:00[消防団活動]→[主宰する建築設計事務所の仕事(時間外)]→23:00[就寝]

Q3.実際に暮らしてみた感想を教えてください。

館山市では、都市のような通勤形態や人混みがない中で、心身に余裕を持って生活を送ることができると実感しています。近代都市で切り捨てられた人間的な快適性が、館山市にはまだあると感じています。
また、館山市から東京都内まで2時間以内で移動できるので、普段はのんびり暮らしながらも、大都市で刺激を受けたければすぐに東京に赴くことができる地域であるということも魅力の一つです。
一方で、田舎の農村型コミュニティと良好な関係を築くために多くの努力を必要とすることや、車がないと生活ができないことが不便な点としてあります。近年、田舎の良さが再評価されている中で、現実として受け止めなければならない住み難さもあり、それらを認識していない移住者と元々の住民との間に大きな溝ができてしまうことも課題の1つであると感じています。

祭礼や消防団活動をはじめ様々な活動に参加し、地域コミュニティの活性化を図っています。

祭礼や消防団活動をはじめ様々な活動に参加し、地域コミュニティの活性化を図っています。

Q4.今後の目標を教えてください。

1つ目は、「道楽」をテーマにしたまちづくりの実践と理論化、手法化を行いたいと思っています。道楽とは「自分のための仕事」という意味で、夏目漱石の定義です。これをまちづくりに応用することで、住民参加を促進し、効果的なまちづくりを行える可能性があります。また、道楽は貨幣経済を補完するような役割を果たし、近代的な労働を乗り越え、現代的な労働のあり方に示唆を得たいと思っています。

2つ目は、住民主体で運営する「まちづくり会社」を設立し、収益活動を行い、収益を公共に再投資する仕組みを作ることです。館山市のような商業的に成功を収めた地域は、各商業者が地域を支えてきましたが、人口減少により経済が縮退する中でその関係が崩れ、地域を支える主体が空洞化しています。各商業者が行政と協力し、地域を支える仕組みをつくりたいと思っています。

館山市長須賀地区において製作されている唐棧織は、千葉県無形文化財に指定されています。改めて唐棧織の魅力を発信するため、使われていない空き家や石蔵、倉庫等を展示会場として活用しています。

館山市長須賀地区において製作されている唐棧織は、千葉県無形文化財に指定されています。改めて唐棧織の魅力を発信するため、使われていない空き家や石蔵、倉庫等を展示会場として活用しています。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください。

1. 自分の専門性を見つめ直すこと
自分が地域でできること、地域でやりたい活動を、自分の専門性を見つめ直し考えて欲しいと思います。

2. 行政のことをよく調べること
地域おこし協力隊事業は、行政と協同で行う部分が多くあり、行政の判断によって自分がやりたいと思うことをそのまま実行できない場合もあります。どのようにすれば実現できるのか、何が妨げになるのかをよく調べた上で、自分のやりたいことを貫き、相手を説得できるよう知識を身に付けてください。

3. 過去の手法を見直すこと
昔は有効であった手法は、現代において有効ではなくなっていることがあります。しかし、それらは今でも常識的な、常套手段的な手法として使われることが多々あるため、現代に見合った手法を見極め、事業に取り組んでください。

地元商業会の方々と連携し、計画をすすめます。

地元商業会の方々と連携し、計画をすすめます。

PROFILE / 岸田 一輝 さん

岸田 一輝 さん
年齢
29歳
着任年月
2014年
出身地
東京都
前職
千葉大学大学院特任助教
隊員になって良かった事は?
地域に深くコミットしながら地域おこし活動、また、まちづくりに関する研究が行えること。

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