Interview隊員インタビュー

Vol.44 広島県三次市 - 野口 拓郎さんその人にしかできない役割が必ずある

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください

学生時代にネパールの山奥で農村開発の研究と実践をしていました。そこで、『過疎』という問題が起きていることを知り、今後、急速に過疎化が進んでいくことは、おそらく世界的な問題になるだろうと思い、まずは日本で過疎に関わる経験を積みたいと考えていました。

日本では、過疎化が進んでいる中国地方に行ってみたいという気持ちが強く、ちょうど中国地方の真ん中に位置する広島県三次市が地域おこし協力隊の募集を行っていたためすぐに応募しました。

家族には、協力隊が決まったあとに三次市に引っ越すことを報告したのですが、『海外に行くかと思っていた。国内にいるなら安心ね。』という素っ気ない反応でした(笑) そんな家族も含め、大学の恩師や友人も、学生時代に学んだものが最大限活かせそうな仕事に就けたことを喜んでくれました。

霧の海をモチーフにした三次観光イメージキャラクター『きりこちゃん』と三次市のシンボル『巴橋』の2ショット。

霧の海をモチーフにした三次観光イメージキャラクター『きりこちゃん』と三次市のシンボル『巴橋』の2ショット。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

『ウチの地域には若者がいない。』という過疎地の常識を覆すこと。それが私の数ある活動の中で一番力を入れていることです。

私の担当地域の三次市川西地区は、山に囲まれた人口1,100人、高齢化率45%の典型的な過疎地域です。『川西の若者は地域おこしなんて興味ない。みんな都会に出て帰ってくることもないだろう。』というあきらめの声。それを聞いた時、『これだ!これを覆したら地域のためになる!』と感じました。

まず、最初に着手したことは、川西出身の若者限定のfacebookページを立ち上げたことです。今では60名以上の若者が加入していて、ほぼ毎日地域の情報を発信しています。「都会にいながら地元の課題や今の動きを把握できることはありがたい」という声を頂いています。

おかげさまで、Uターン者も増えていますし、帰省のタイミングで地域おこし活動を手伝ってくれる若者も増えています。

川西地区出身の若者達で結成された地域おこしグループ。ミーティングの様子。

川西地区出身の若者達で結成された地域おこしグループ。ミーティングの様子。

ある一日の活動
7:30 [起床] → 8:00 [朝食] → 8:20 [事務所出勤] → 8:30 [都会へ出た地域出身の若者への地域情報の発信] → 10:30 [農家民宿開業サポート(書類作成)] → 12:00 [昼食] → 13:00 [農家民宿開業に向けての協議(市役所、消防署)] → 14:00 [老人会の企画] → 19:00 [地域にいる若者とのミーティング] → 22:00 [帰宅] → 22:30 [大学生との地域おこし勉強会(スカイプにて)] → 25:00 [就寝]

Q3.実際に三次市に暮らしてみた印象を教えてください

三次市川西地区に暮らしてみた当初は、とにかく『過疎』を感じました。僕が生まれ育った茨城、学生時代を過ごした東京とは全く違う環境に少し戸惑いました。

店が無い、若者がいない、上下水道が通っていない・・・某歌手の『オラ東京さ行くだ』の歌詞の世界がイメージできましたね(笑)

しかし、地域を知れば知るほど徐々に魅力が分かり、魅力を知ると不思議と日々の生活も楽しくなってきました。川西の魅力を多く知ることができたので、地域の方々と一緒に『川西へぇ~BOOK』という地域の雑学本を作成しました。地域の魅力をリストアップし、都会育ちの大学生が『へぇ~』と感じたものを抜粋して冊子にまとめました。その結果、大きな反響があり、新聞やテレビにも取り上げられ、地域住民からも好評でした。地域の当たり前を、地域の誇りに転換させることができたことはとても嬉しく思います。

霧の街と呼ばれる三次市。秋から早春にかけての晴れた日の早朝に、霧の海(雲海)が見られます。写真は、岡田山からの景色。山頂は寒いので、防寒具は必需品。

霧の街と呼ばれる三次市。秋から早春にかけての晴れた日の早朝に、霧の海(雲海)が見られます。写真は、岡田山からの景色。山頂は寒いので、防寒具は必需品。

Q4.今後の目標を教えください

協力隊の活動期間も残り半年を切りましたので、ラストスパートをかける時だと思っています。

私が一番の目標としていることは、地域おこしに目覚めた地域出身の若者達が、今以上に輝けるようにサポートをしていくことです。それができれば、その若者の友人達も触発されて地域おこしの仲間が増えていくでしょうし、何より地域住民に安心と希望を与えることができると思います。

あとは、地域の中高生や全国の大学生に地域おこしの面白さを伝えていきたいと考えています。私達の次の世代もしっかりと育てていかないといけないと思いますので。

三次市および近隣自治体の若手職員、県内の大学生を招いての地域おこし勉強会の様子。ファシリテーターを担当。

三次市および近隣自治体の若手職員、県内の大学生を招いての地域おこし勉強会の様子。ファシリテーターを担当。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください

大学の恩師が考案し、私が改良を重ねた『のび太理論』。

『ドラえもん』という超名作は、ダメキャラののび太を中心に話が展開されています。怠け者で、勉強ができなくて、弱虫ののび太。のび太をいじめるジャイアンとスネ夫。のび太を助けるために尽力するドラえもん。のび太に優しく接するしずかちゃん。のび太のおかげで周りのキャラが際立ち、そして、のび太が勇気を振り絞った瞬間に、ジャイアンやスネ夫が仲間になるというお決まりの感動シーン。

『自分は何もできない』と思っている人も、その人しかできない役割は必ずあると思っています。謙虚で明るい姿勢があれば、きっと楽しく感動的な活動ができるはずです。ぜひ地域おこし協力隊にチャレンジして欲しいと思います。

川西地区、そして三次市出身の若者達が集結した流しそうめん祭り。若者達が企画し、地域のお母さん達と一緒に運営しました。

川西地区、そして三次市出身の若者達が集結した流しそうめん祭り。若者達が企画し、地域のお母さん達と一緒に運営しました。

PROFILE / 野口 拓郎さん

野口 拓郎さん
年齢
28歳
着任年月
2011年4月
出身地
茨城県
前職
大学院生
隊員になって良かった事は?
多くの問題に直面し、苦しむ事も多々ありましたが、それらを乗り越えたことによって地域住民から感謝の声をいただいた時、『隊員になって良かった』と感じます。自分が必要とされているということが最高に嬉しいです。

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