Interview隊員インタビュー

Vol.40 長野県木曽町 - 都竹 亜耶さんこれからどう暮らし、生きていくかを共に考えたい

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください

学生時代は、世界各地を旅してファッションに夢中でした。アパレル商社に就職後、念願の海外で観光・店舗開発の仕事に携わり、帰国後はマーケティング会社でワーカホリックな日々を送っていました。

しかし、華やかなファッションビジネス、世界の観光戦略、東京の消費社会という情報やモノに溢れた都会の暮らしに疑問を感じ始め、徐々にライフスタイルへの関心が高まっていきました。

その後、食品会社で製パンの仕事に就き、その傍ら、マクロビオテッィクスクールに通い、週末農園や発酵食作りに目覚め、そのルーツは田舎にあることに気付き「田舎で暮らしたい!」という想いが強まりました。そんな中出会った郷土色豊かな木曽町で、これまでの経験を活かして働きたいと思うようになり、その後、木曽町地域おこし協力隊療養型地域振興・食事療法部門の募集に惹かれ応募しました。

霊峰御嶽山を望む開田高原では在来馬の木曽馬たちがのびのびと種の保存のために飼育されています。

霊峰御嶽山を望む開田高原では在来馬の木曽馬たちがのびのびと種の保存のために飼育されています。

Q2.日々の活動内容や活動を通じて感じていることを教えてください

木曽町地域資源研究所スタッフとして、木曽町の特産品である無塩の乳酸発酵したお漬物「すんき漬」の乳酸菌の分離培養や木曽町由来の酵母を採取し、木曽の天然酵母パンをつくる業務に携わり、それらを通じて地域の方々に協力していただきました。

1年目は、とにかく地域の人々のあらゆる声に耳を傾け、地域の歴史や文化を紐解くことに専念しました。2年目以降は、私ができることを必要としてくださる地域のニーズに合わせて、自然豊かな木曽町でスローフード木曽事務局として「ストーリーのあるおいしいものを食べるしあわせ」をキーワードに、山歩きを通じて山野草を学び食す会、講演会、発酵食講座などを企画運営。木曽町内外に向けて木曽の魅力を発信し、地域への誇りを再認識してもらえるよう奔走しています。

魅力のあるコミュニティを実現するためには、地域の方の主体性が大切で、そのモチベーションを喚起し陰で支えることが協力隊の私の役割であると感じています。また、協力隊の活動や研修を通じて、日本全国に同じ志の友達ができたことも大きな成果です。

地域の食材や酵母を用いて親子パン教室を定期的に開催しています。

地域の食材や酵母を用いて親子パン教室を定期的に開催しています。

ある一日の活動
5:30 [起床] → 6:00 [朝食、朝時間(畑、パン作りなど)] → 7:50 [出勤] → 8:00 [地域清掃ボランティア] → 8:30 [地域食関連施設を訪問し地域食資源の聞き書き] → 12:00 [昼食] → 13:00 [地域資源ベースの企画書作成、承認を得る為の起案書作成、マスコミへの発信など] → 18:00 [帰宅し家事を済ませてから食やコミュニティビジネス関連の読書、webで知人との交流] → 23:00 [就寝]

Q3.実際に木曽町に暮らしてみた印象を教えてください

『木曽路はすべて山の中である』-文豪島崎藤村の「夜明け前」の有名な書き出しにある通り、木曽町は山々に囲まれています。

めくるめく変わる空模様、極寒の地の星空の美しさ、四季の山々が教えてくれる多様な木々の色彩、木曽谷に伝わる伝統行事や郷土食、そのどれもがビルや人混みに囲まれて育った私にとって貴い体験となりました。中山道沿いに位置する木曽の人々は、街道文化の影響でおもてなしの心に富み、突然3年前にやってきた私を温かく迎え入れてくださいました。

映画館やショッピングモールはないけれど、情報やモノに溢れた都会から距離を置くことで、マスメディアと自分の価値観をじっくりと照らし合わせることができるようになった気がします。

ちょっとした不便はアイデアの源になり、通勤ラッシュや人混みで、見えないストレスを感じることもなくなりました。エアコンのない暮らしは灯油や蒔きが主流。そうして可視化されることでエネルギーの大切さを痛感しています。都会では大枚を叩いてでも学びたいという環境が木曽町には溢れています。

木曽谷を見守る天下の霊峰御嶽山。四季折々に楽しめる神秘の自然が魅力です。

木曽谷を見守る天下の霊峰御嶽山。四季折々に楽しめる神秘の自然が魅力です。

Q4.今後の目標を教えください

「わが町村を輝く地域にしたい」という想いは、自治体、地域住民、協力隊に共通しているにも関わらず、地域の人の多くが協力隊制度を知らず、配属された自治体で思うように活動できない問題があります。また、協力隊任期後、地域活性化をいかにして生業に発展させ、その地域に定住するかなど、同じ悩みや不安を抱える女性協力隊員がたくさんいることも研修を通じて知りました。そして、震災や過疎化など、経験したことがないことが起こる中、これからどう暮らし、どう生きていくか、そうしたことを自治体、地域住民、協力隊が共に考える場が今必要だと感じました。

地域おこしのルーツは、古来から女性たちが受け継いできた家事の智恵の延長であることに気付き、その智恵を都会育ちの女性協力隊の視点と融合させることで、新たに生まれる地域再生を模索したいという想いから、自治総合センターの助成を受けて、今秋『地域おこし協力隊全国女子会シンポジウム&フェスタ in 木曽町』を開催することになりました。

任期終了を控えた最終年度、この女子会に全国各地からより多くの方にお越し頂き、つながりの輪を広げ、成功させることが目下の目標です。

町内農家民宿にて。2012年2月に開催した全国女子会プレイベントでは全国各地の協力隊女子との交流を深めました。

町内農家民宿にて。2012年2月に開催した全国女子会プレイベントでは全国各地の協力隊女子との交流を深めました。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください

小さな田舎町に突然入る協力隊が、たとえどんなに立派なスキルを持っていようとも、まずは、地域の課題に対する問題意識と謙虚さ、誠実さ、素直さが最も大切だと感じています。

地域の中でニュートラルな立場で多様な声に耳を傾け、時には休日の行事やお誘いも笑顔で受けると、思わぬ人との繋がりから新たな展開が生まれることもあります。各地域ごとに抱える問題は異なり、これといったマニュアルもない。その中で、信念と忍耐、そして柔軟な発想が求められる場面も多々ありますが、そこにやり甲斐を感じることができれば自然とよいスパイラルが生まれてくるような気がします。

協力隊は年中無休のライフワークなので、田舎でのんびり癒されたいという逃避感覚でできる仕事ではないかもしれません。

しかし、自然環境に恵まれた環境で暮らし、その地域のために働く協力隊の仕事は、そこで得るつながりと経験が、かけがえのない自身への未来投資でもあると感じています。

スローフード木曽恒例の創作山菜料理の会の試食の様子。

スローフード木曽恒例の創作山菜料理の会の試食の様子。

Information

地域おこし協力隊”全国女子会”シンポジウム&フェスタin木曽町を開催します!!

女性ならではの視点にフォーカスして、「五感」を使って地域おこしについて考え、楽しむイベントです。
フェスタでは、協力隊女子による全国津々浦々の美味しい食べものや楽しいコトを体験できます!
シンポジウムでは、「女子力」と「田舎力」の可能性について多角的に考察し、じっくり話し合います。
興味のある方はぜひご参加ください!!

詳しくはこちらから

地域おこし協力隊”全国女子会”シンポジウム&フェスタin木曽町を開催します!!

PROFILE / 都竹 亜耶さん

都竹 亜耶さん
年齢
34歳
着任年月
2011年4月1日
出身地
東京都府中市
前職
都内・食品会社・パン職人
隊員になって良かった事は?
信念をもって地域の方々の賛同を得ることができれば、企画から運営まで一連の事業を裁量することができることに大きなやり甲斐を感じています。人とのつながり、思いやりが仕事の大きなキーポイントとなるところも魅力と感じています。

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