Interview隊員インタビュー

Vol.59 岩手県二戸市 - 永井 尚子(ながい)さん「結い」の精神や息づく知恵、それこそが観光資源

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

7年前に旅した岩手県北の自然や雰囲気が忘れられず、以来岩手に移住したいという気持ちをおぼろげに抱いていました。

きっかけは東日本大震災。店頭から物が消え、買占め行動に走る人々を見て、物がなくなれば終わってしまう食料生産機能を持たない都市暮らしへの危機感を感じ、都市からの脱出を決意しました。移住のきっかけとして全国に施設を持つリゾート会社に入社しましたが、赴任先だった弘前で深浦の地域おこし協力隊と知り合い、「地域おこし協力隊」制度を知りました。調べてみると、岩手県北地域の募集が出ていて、二戸の工芸品、浄法寺漆器のファンだったこと、活動内容にも興味を持ったこと、隊員の得意分野や個性を生かした仕事をしてほしいという役場の思いに惹かれて応募しました。

二戸は一馬淵川、安比川沿いに集落が広がる中山間地域。

二戸は一馬淵川、安比川沿いに集落が広がる中山間地域。

Q2.日比の活動内容や活動を通して感じていることを教えてください。

任期中は、地元鉄道会社の観光部門と連携し、地域の皆さんをホスト役に二戸の民俗、文化、食、自然、産業を紹介する「エコツアー」の企画やコーディネートを行いました。

ツアー企画の為、あちこちの集落に出没してそこで暮らすみなさんと関わっていくうちに、二戸地域の自然をそのまま映したような郷土食の奥深さに魅せられ、最終年度は地域の食を題材にしたウェブマガジンを製作させてもらいました。任期中に3冊発行したのですが、自分が思っていた以上の反響をいただき、情報発信の大切さをヒシヒシと感じました。

もともと旅好きだったからか、任期中ずっと続けたツアー企画の仕事も、どんどん面白くなってしまい、どうせなら!と国内旅行業取扱管理者の資格を取得したのですが、これが今の仕事(観光協会の職員)に就くきっかけになりました。

春には山菜を取りながら里山を歩くツアーも企画。

春には山菜を取りながら里山を歩くツアーも企画。

ある一日の活動
4:00 [起床、隣町の地域おこし協力、隊と山菜採り] → 8:20 [出勤、SNSの更新と事務作業と午後の打ち合わせ準備] → 12:00 [昼食] → 13:00 [県庁職員さんと打ち合わせ]  → 15:00 [資料作成] → 17:30 [帰宅、食事兼ミーティング]

Q3.実際に二戸市に暮らしてみた印象を教えてください。

人がとっても温かい地域です。

「恥ずかしがり屋が多く一見とっつきづらいけど、仲良くなれば本当に親切にしてくれるのが南部(旧南部藩)の気質」と言われているようですが、本当にその通り。ただ、私の場合は、事前に役場の方が地域のみなさんに話をしてくれていたので、とっつきづらい…という印象は全くなく、着任当初からたくさんの皆さんに優しくしていただきました。中山間地域で、山がとても近い為、季節の移り変わりとともに変わる景色にインパクトというか、迫力があり、毎日変わる景色を眺めるのがとても楽しいです。

そして想像以上に便利な場所です。日々の買い物には困らないし、学校、病院、飲食店など、私の住んでいる場所は、歩いていける距離になんでもあります。冬は本当に寒いですけど、北国が好きなので気になりません。

二戸は昔から、稲作よりも畑作の地域。雑穀食の本場であり、いろいろな食べ方がある。そば粉を練って、伸ばして作った「かっけ」は二戸地域独特の食べ物。

二戸は昔から、稲作よりも畑作の地域。雑穀食の本場であり、いろいろな食べ方がある。そば粉を練って、伸ばして作った「かっけ」は二戸地域独特の食べ物。

Q4.今後の目標を教えてください。

観光協会職員として、二戸の魅力を地域外に発信し、認知度を上げたり、来訪者を増やすことが私の仕事かと思いますが、それだけでなく、受入れる地域内の皆さんにも気付きを生む、そんな観光を目指したいと思っています。

二戸は自然と付き合う暮らしが生んだ里山文化が色濃く残る場所。この地の人々は、現代的な便利さも取り入れながらも、季節をよく読み、自然の恵みをいただき、旬を喜ぶ暮らしをしています。また、人との繋がりを大切にして助け合って暮らす「結い」の精神が息づくところ。自然との付き合い方、人との助け合いという、都市型の暮らしで失われてしまった知恵がたくさん残っている。

そこがこの土地の良さであり、実は観光資源だと思っています。携わって下さる地域の皆さんが、外部の人と触れ合うことで、自分たちの良さを再発見し、もっともっと自分たちの地域が好きになる。そんな観光を作っていきたいです。

冬の極寒の風を味方につけて作る保存食。郷土料理に欠かせない。自然のリズムを読んで暮らす洗練された知恵がまだまだ残っているのが二戸地域。

冬の極寒の風を味方につけて作る保存食。郷土料理に欠かせない。自然のリズムを読んで暮らす洗練された知恵がまだまだ残っているのが二戸地域。

Q5.地域おこし協力隊への参加を考えている方にアドバイスをください。

自分が「大好き」と思う場所に行くのが一番いいと思います。

その土地の自然が好き、文化が好き、人が好き。好きと感じるポイントは様々ですが、自分が「ここ好き!」と思える地域へ行って、その「好き」という気持ちを、どんどん伸ばすよう活動する方が、自分も楽しいし、地域も楽しいんだと思います。

地域おこし協力隊が必要=地域内だけでは解決できない課題があるということなので、地域おこし協力隊としてその地域にいる以上、地域の人以上に地域のために悩み、じゃあ自分は今何をすべきなの?と、自分の存在を問うことやプレッシャーを感じることも多いと思いますが、自分らしさを失わず、頑張って欲しいです。

新緑、紅葉、雪景色、どの季節にも迫力ある景色が観れる、国の名勝指定を受けた景勝地。男神岩、女神岩2つの岩の対比が美しい。

新緑、紅葉、雪景色、どの季節にも迫力ある景色が観れる、国の名勝指定を受けた景勝地。男神岩、女神岩2つの岩の対比が美しい。

PROFILE / 永井 尚子(ながい)さん

永井 尚子(ながい)さん
年齢
44歳
着任年月
2012年11月
出身地
東京都大田区
前職
リゾート会社
隊員になって良かった事は?
地域内の人々、地域で活動している協力隊の仲間達、協力隊になったからこそ、たくさんの出会いがありました。

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